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異世界でもラーメンたべたい  作者: ぽるぬるぽ
ラーメン狂い、異世界に立つ
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 おあずけを食らっていた分のラーメンを食したことで、俺の意識は普段の自分の世話をするモードになってきた。


 ヤク中がキメた後は落ち着いて会話ができる様になるやつだな。ラーメン後は冴え渡るわぁ~。


 気づけば街をラーメン店を探しながら歩いていた。やっぱり中世ヨーロッパみたいだね。説明いる?強いて言えば店が光ってないので分かりづらいくらいだ。


「嬢ちゃん、あんたホントに一人だったのか。危ない。ちょっとウチに来てくれ」


 聞き覚えのある声、振り返ると前掛け付けたままの店主がいた。店裏の店主の家へつれてかれる。


 テーブルに座らされて、茶が出た。番茶っぽい。飲む。味も番茶っぽい。ええぞー。



「でな、嬢ちゃん―」



 店主はガリオン。38歳。妻子持ち。熊獣人らしい。よく見ると熊の耳生えとるわコイツ。


 ここはシリオ大陸、共和国シリオ領内、首都シリオの城下町から馬車3日の距離の山沿いで運河の通る、貿易と資源採集、鉱山も近いイイ立地の街、ベルポス。城塞都市っぽく発展し、軍も駐屯してるんだって。領主はマーフィス・モルドフィル。まぁ可も無く不可も無く、世襲で継いでよろしく領地経営している58歳おっさん。



 この世界の常識を店主からダウンロードする。金銭は、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、ミスリル貨と十進数で繰り上がる。



 まぁまぁ、味の付いたちょっとイイ総菜パン一個で銅貨一枚程度。100円、一ドルくらいだねー。

 世界で流通してる硬貨はかなり小さいよ。名前の違う大きい金貨なんかもあるっぽい。



 文明レベルは平均的に中世から近世手前くらいかな。魔法があるよ。魔物が居るよ。魔王も居るよ。魔族とは存在同士が必ず殺し合う訳では無い感じ。種族が違うから、敵対関係はしょうが無いって感じ。共通語の言葉は通じる。交渉、交易は出来てる。大陸毎に棲み分けてる感じだね



 ここ、シリオ大陸はシリオ共和国とその傘下の同盟国で構成されている。獣人が多め、同じくらい普通の人、エルフ、ドワーフと続く。魔族もチョコチョコ居るってさ。獣人が千差万別だから、他種族への偏見はそんなに無い。


 王族、貴族と戦争奴隷、借金奴隷、犯罪奴隷が居るよ。まぁ予想通りの感じですよ。


 俺が召喚されたのは中央大陸、タンベルト王国。

ちなみに俺は全ての言語が話せて読み書きできるっぽい。


 冒険者ギルド、商業ギルド、魔法ギルド、色々あるよー。


「てな訳だ、嬢ちゃん。ほんとに物を知らないな」


「そうなんよー。まぁラーメン食えれば俺はそれで良いんだ」


「ラーメンとは一体、…・」


 俺の事も聞かれたが、よう分からんわ、気づいたら居たわって感じよ。


「それでだ、嬢ちゃん、これからどうする?」


 それなー、アレだろ、冒険者になれよって流れだよな完全に。鈍感系主人公じゃあるまいし、分かってんのよ。でも、やる意味があんまり見出せないんだよな。



 だが、魔物の素材の店主のラーメンモドキ、旨かった。これは冒険者になって魔物狩って至高のラーメン作る流れなんだよな。未知の旨いラーメンを念じても出てこないし。俺はこの世界の食材でラーメン開拓して極めるしかないんだ。


 外国人の日雇い派遣ビザくらいの吹けば飛ぶ身分の冒険者、でも誰でもなれる。Sランクになれば一角の身分らしいしなぁ。完全にお膳立てされてるわ。至高のラーメンロードがな。


「でもさ、俺幼女じゃね?」


「それなぁ、嬢ちゃん、良くて8歳くらいか?」


「うーん」


 鏡で確認。金髪の人形みてーな幼女だわ。


「店主、昔は冒険者だったんでしょ?コネとかでねじ込めない?」


「やっぱウチで店を手伝わないか?」


 あ、そういう、ちょっと冒険者の話して、チラつかせといてやっぱ引っ込めるっていう。心得てんなぁ。


 次の瞬間、ガリオン店主はラーメンどんぶりに突っ伏していた。かわいそうなので中身は無いよ。


「なんだ、これ、う、動けん。何も見えん。これどんぶりか?ぐぅううう~」


「これが俺の力だ。その気になれば店主は一瞬で熊ラーメンに変化する。抵抗は無駄だ」


「……やべぇ、なんだラーメンって」


「食い物だ」


 店主はブルった。






 冒険者ギルドに来たぞ。


 どいつもこいつも、不良に鉄パイプ、キチ○イに刃物、世紀末ヒャッハーな出で立ちでこっちにメンチ切ってくる。

 だか店主を見て『勝てねぇ…』って悟って目を逸らす。店主は熊さんが二足歩行したみてーな図体だ。こんなん絶対強いわボケが。だが、ラーメンの食材になる可能性を秘めている。所詮は具材よ。つまりラーメンには勝てないって事だね。



 受付はきれい系半熟女一歩手前。

 バインバイン姉ちゃん、顔も整ってるがアホっぺー。

 隣に若い衆の男モブが突っ立ってる、興味ねぇ。

 あと白髭じいちゃん、魔法凄そう。

 そして猫獣人っぽい女、アキバに居そう、かなりの完成度。


 今は店主が店を閉めてそろそろ陽が落ちる時分。並び人数は想像しろ。



 俺を肩に乗せている熊さんが迷い無く、若い衆のモブ男の所へ並ぶ。ええ?確かに並び人数少ないし処理速度も速そうだけどさぁ~。


 普通そこはバインバインねーちゃんか猫にゃんの所ダルルルォオオーン?


 俺はバインバインねーちゃんの方に店主の首を向けた。力そんなに入れてないのに、首が取れそうなヤワさで店主の首が動いた。大丈夫?首取れてない?よし、取れてない。


「あっちだ、ラーメンになりたいか?」


 我らが一行の尋常ならざる圧を感じてか、背後を振り返った冒険者が、そそそっと別の列に並び直す。

 へへっ、悪いな。気の利くやつは「俺ちょっと便所行ってくるわ」と言って退く。


 うむ、くるしゅうないぞ。




 さっきまで「あーい、そざいですねぇー?」とか言ってたバイン姉ぇが俺の番になるといきなりキリッとした。


「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどのようなごようけんでしょうか?」


「あそこで麺の店を出しているガリオンだ。今日はこの子の冒険者登録をしに来た」


「は、はい。失礼ですが。お名前とお歳を、お聴きしてもよろしいでしょうか?」


 名前な、女の子だからなー。


「わたし、タンタン・ラーメン!たぶん、はっちゃい!」


 よし。完璧じゃ。ついうっかり幼女ロールプレイしてしまったわ。


「あー、ハイ。カシコマリマシタ。少々お待ちください」


 少々待っていると奥から如何にもなおっさんがやってきた。ガチムチで帯剣してる。ギルマスかな?不機嫌ですって顔してる。

 貴族のぼんぼんのガキが道楽で登録とか舐め腐りやがって、ここは遊び場じゃねーんだよ。分からせてやるって顔だな。


「あ、ガリオンさん、こんばんは。えーと、今日はその女の子の冒険者登録と言うことで、色々とお聴きしますので、奥へどうぞ」


 店長にビビったな。






 魔物だかなんだかの死体を掻っ捌いて加工してるスペースの隣、砂地の広場に来た。


「えーと、タンタンちゃんは冒険者ってどういうお仕事するか、知っているかい?」


「魔物倒す?傭兵崩れの日雇いの便利使いの鉄砲玉っしょ?」


「ふむ、なかなか、分かっているね」


 若い衆がでっかい犬を連れてきた。


「あの犬が魔物の底辺だ。アレと戦って貰う。勝てなくても良いが、戦いにならない様なら貴族であっても冒険者登録は許可できない。準備をしたまえ。危なくなったら止めに入る。怪我をしたくないなら登録は諦めてくれ。どうする?」



「もう殺した。殺した?まぁ倒したぞ」


 そこには机が出現し、ラーメンがあった。


「ん?ワイルドドッグは?」


「ラーメンになった」


「ラーメンとは?」


「あのどんぶりの料理だ」


「……」


「お前もいつでもラーメンにできる。気を抜いたら、ラーメンだ。うまいぞー」


「……」


 なんやかんやあって冒険者登録できた。


 登録情報の特技欄は『ラーメン』。

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