陰はどうやっても陽にはなれないのか
俺達はギリギリ遅刻せずに済んだ。
いつもは早めに学校に行っているから遅く行ってもギリギリ間に合うくらいだったのだろう。
マリーは転校生のため職員室へ行き、俺は新クラスである2年C組の教室へ行った。遅刻ギリギリで他に登校しているものはいなかったのでマリーとの登校を見られなかったのは幸いだ。だが、遅くきたため、もう教室内はすでにグループが出来上がってしまっていた。
別にいいし。俺ぼっちだもん。
その後、何事もなく入学式が終わり、新学期初日のホームルームも終わり、放課後を迎えた。ちなみにマリーはうちのクラスなどではなく、2年A組だそうだ。陽キャの会話を盗み聞いた。
教室内では新クラス交流会をしようという流れになっていた。早急に俺は立ち去る、わけにはいかないのだ。これも例のいまいましい手紙のせいである。
『最初のクラス会には参加しろ。そうすれば梨花と関わることはないはずだ』
散々ぼっちでいろと言っていたくせにクラス会には参加しろとか意味がわからん。それに、今度の名前はカタカナじゃなくて漢字で書いてあった。どうしてだ? マリはカタカナで書く理由があったとか? 例えば漢字がないカタカナの名前だったとか? マリーとかいう感じの。まさかな? 俺は手紙の言う通りにしたんだ。出会うわけがない。
とにかく今はクラス会だ。と言ってもどうやって参加すればいいのだろうか? 誰か俺を誘ってくれるのか?
そんなことを思っていたら今回のクラス会の幹事らしきイケメン陽キャが近寄ってきた。
「えっと、倉本くんだっけ? どう? クラス会来ない?」
「行きます!!」
やっべ、思わず食い気味に返事しちまった。
「おお、やる気満々だねぇ。おっけ、駅前のカラオケでする予定なんだけど。場所は分かる?」
駅前のカラオケね。うん。
「ごめん、分からない」
「おっけー。じゃあ一緒に行こうか?」
......優しい。イケメンは性格までイケメンなのかよ。
こうして俺とイケメンくんは駅前のカラオケ店へと行くことになった。といっても2人だけでなく、もう4人程度いたのだが。しかも全員陽キャ。
カラオケ店へと行く道中、陽キャ達の会話についていけない俺ははぐれない程度にそのグループと距離を開けて歩いていた。
そんな時に、突然小学2年生くらいの男の子がぶつかって来て、その男の子が尻餅をついて転んでしまった。
「いたっ!!」
「ごめん大丈夫?」
慌てて謝り、俺は手を差し伸べる。
「クッソ。前みて歩けよ陰キャ」
そう言って差し伸べられた俺の手を払い、男の子は走り去っていった。今時の小学生こえーよ。
「ったく。今は一応陽キャグループに属してんだよ」
そう呟いて、前を見てみると陽キャグループの集団は消えていた。やっぱ俺陰キャだったわ。