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善き魔女はスローライフに憧れる  作者: マチバリ
1章 魔女はじめます
13/24

13

 


 翌日、ルイザと双子に留守番を頼んで屋敷を出る。

 荷解きが殆ど終わっていないので、わかる範囲での整頓を頼んでおく。

 一人暮らしのつもりで準備しておいたものでは色々と足りないだろう。

 必要なものがあれば遠慮なく言うようにと言い聞かせる。


「屋敷妖精」

『なんでしょう』

「また少し留守にするから、子供たちをよろしくね」

『わかりました』


 緑の灯が優しく光って見送ってくれた。




 村長の家に着くとすでにティルが待っていてくれた。

 遅くなったことを詫びるが、自分も早かったからと一人前の対応だ。




 小さな村だとは聞いていたが、思ったよりも豊かな様子で、中心部には小さな市場が出来ていた。

 その市場を囲むようにいくつかの食堂や店があり、その奥は住民たちの家、畑や牧場、工房などがあるらしい。


「どっか行きたいところある?」

「生活用品がどれくらい買えるのか知りたいから、そういうのを売ってるお店はあるかしら。それと服を売っているお店があれば連れて行って」

「うーん・・・雑貨屋ならあるけど服はなぁ。みんな自分で作ってるし、必要なら仕立てを依頼するからなぁ」


 大きな街ならまだしも、服は既製品より自分たちで仕立てるのがまだ主流らしい。人口を考えれば当然か。


「じゃあ、とりあえず雑貨屋さんに案内してくれる?」

「それならこっち」


 案内された雑貨屋ではこまごまとした生活用品を取り扱っていた。

 服はないが布地はたくさん売っている。


「いらっしゃいティル。ええと、そちらは・・・」


 恰幅のよい女性が接客に出てくる。


「えっと、丘の上の屋敷に越してきた・・・」

「!!魔女様!魔女様だね!!」


 女性は喜びの様子で私の手を取った。


「先代様が居なくなって寂しかったんだよ。新しい魔女様が来るって言うからみんな楽しみにしてたんだよ!」


 どうやら村全体で歓迎してくれているというのは嘘ではないらしい。


「私はマルサってんだ。この店の店主だ。欲しいものがあれば仕入れてあげるから、何でも言っておくれ」

「ありがとう。今日はまだ何が必要かわからなくて見に来ただけなの。あ、でももし子供の服があれば探してほしいんだけど」

「子供の服?なんに使うんだい?」

「ええと、一緒に暮らしている子供たちがいるんだけど着替えが必要でね」

「子供がいるのかい?随分と若く見えるけど・・・」

「・・・妹と弟たちなの」


 そういう事にしておくのが一番だろう。


「そうかい。それならうちの子たちが小さい頃に着ていた服が何着かあるから、よかったら持って行っておくれ」

「いいんですか?お代は・・・」

「いらないよ!魔女様が越してきてくれたお祝いだ!どうせ古いんだし、着てくれるなら服も喜ぶ」


 マルサは言うが早いか奥に引っ込んで、数着の子供服を包んでくれた。

 貰うだけなのは気が引けるので、子供の髪を整えるための小さな櫛と生地を少し買う事にする。

 そして店で何がよく売れるか、仕入れに困っている物が何かなどの話を聞く。

 これから先、どんなことで生計を立てておくか考えるのも大事だ。

 井戸の滑車が壊れかけているのを相談したら、隣の道具屋に話をつけてくれて釘とロープと桶を買う事ができた。かさばるのであとで届けてくれるらしい。

 修理が難しそうなら、出張でやってくれることになった。


 ティルの案内で他の店もいくつか見て回る。

 漁業もしているからか、海産物も豊富だ。

 見た事のない品物もあって新鮮な気持ちになる。


 気が付けば、昼をとっくに過ぎていた。

 ルイザ達の為にパンを買っておくことにした。

 案内のお礼にとティルにも一つ買ってあげる。



「他に行きたいところは?」

「そうね・・・薬を扱っているお店なんかはある?」

「昔はあったけど今はない。店だけは残ってるけど」


 案内してくれたのは、屋敷にも近い村のはずれ。

『パルル薬店』と看板がある小さな店。


「ここって」

「先代の魔女様が薬を売ってた店なんだって。今は薬の在庫が尽きたから、もう閉めてる」

「じゃあ今は病気や怪我の時どうしてるの?」

「傷薬は家で作るし、病気の時は街の医者を呼んでるんだ」

「そうなの・・・」


 医者が存在しない村と言うのは珍しくないので、それが通常の対処法なんだろう。


「なぁ、魔女様も薬を作るんだろ?」

「そうね。そのつもり」

「そっか」


 ティルが少しだけ嬉しそうに表情を緩ませる。


「じゃあ、もう遠くまで薬を買いに行ったり医者を呼びに行かなくて済むかもしれないんだ」


 これまではずっとそうして来たんだろう。


「すぐにお役にたてるかわからないけど、頑張りたいわ」

「待ってるから!」


 ティルの期待に満ちた表情に、これは頑張らなければと身を引き締める。






 屋敷に戻るとルイザと双子が忙しそうに動き回っていた。

 積まれていた荷物は半分程に片付き、すっきりしている。


 何か足りない物がないか確認するが、屋敷に元からある物は意外と多く、それほど買い足す必要はなさそうだ。

 日々の食糧を買う店も教えてもらったので何とか生活していけるだろう。


 マルサにもらった服を三人に着せてみる。

 双子たちにはやはり少し大きいので、裾や丈を縫い上げて調整する。

 ルイザはほぼ手直しがなく着られる服が数着あり問題なさそうだ。

 そのうち、ちゃんと仕立ててあげなければ。



 少し遅めの昼食に買ってきたパンを食べながら、これからの生活について三人で話し合った。


「私はまだ魔女として何をしていくか決まってないの。とりあえずは先代魔女が残したレシピで薬を作ろうと思っているわ」


 一階の奥には開かない扉があると子供たちが教えてくれた。

 屋敷妖精に確認すれば、先代が薬などを作っていた魔女しか入れない魔女の部屋なのだという。


「家の中は片付いたけど、庭はまだまだね。井戸や洗濯場の修理も必要だし、薬草園を作ろうと考えているから草むしりもしなきゃ」

「私も手伝います」

「草むしりするよ!」

「するよ!」


 ルイザも双子も頼もしい限りだ。




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