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首が取れる百合~デュラハンちゃんと飛頭蛮ちゃんと~《完結》  作者: いかずち木の実
異形と黄金のパレード
10/17

泉の女神のおかげで人生変わりました

「……なるほど、そういうことがあったんだね」

 正直なところ納得できていない様子で、ハカリコは自分に言い聞かせるようにうなずいていた。

 彼女の目の前には、黒髪の美少女と、自分そっくりな浮遊する首。

 すなわち、『金の斧』かと思ったら『金の斧銀の斧』で、首を何故かふたつ手に入れてしまった――それが事の顛末らしい。

 馬鹿じゃないのか。

 そりゃもう、吸血鬼やドラゴンが異界には存在するのだから泉の精がいてもおかしくはないだろう。

 最初は流石に別人を疑ったが、本人しか知り得ない質問なんてものをするまでもなく、ハカリコには本能的に彼女が首藤ミユキだとわかってしまった。

 ……だって、魂がどう感じてもミユキだから。

 見た目がいくら変わろうとも、魂だけは変わらない。

 だからこの美少女は、絶対に首藤ミユキだ。

「――でも、流石におかしいでしょ! だいたい、元の首どこ行ったの!?」

「あははは、私もそう思う。大変だったよ、家族に信じてもらうの」

「私も正直、未だに信じられてない。ていうか、夢?」

 古典的だがむんにょりとほっぺたをつねってみると、普通に痛かった。

「わ、すごい伸びるね。さすが美少女。肌から別物だ」

 なんていいながらミユキ(?)も自分のほっぺたを伸ばす。

 ハカリコと負けず劣らず、大福めいて伸びていた。

「うん、美少女ってすごいね」

「……首藤さんはどちらかというと、美人のほうが正しそうだけど」

 見やるのは、元のミユキの体。

 ……足が馬鹿みたいに長い。すっげえスタイルだ。

 こう言ったら元の顔に失礼がすぎるが、顔が良くなったことでスタイルの良さがめちゃくちゃに引き立っている。

「少女だよ、まだまだ。……あ、そういえば忘れてた、ごめん」

 いいながら、ミユキが鞄からマフラーを取り出した。

 一昨日ハカリコがプレゼントした、赤と黒のチェック。

「えへへへ、双子コーデだね」

 まばゆい笑みを浮かべて、実に彼女らしくない語彙をミユキは言った。

 ていうか、さっきからやけに饒舌だ。

 顔だけじゃない、頭の中身も変わってしまったかのように。

 こんな人垣の中心で堂々と話せるような子ではなかったはずなのに。

 これこそが、美少女効果だとでも言うのか。

「……うん、そうだね!」

 ――なんて、そんなひねくれた思考がよぎる余裕はハカリコにはない。

 だって、いかにもクール系のような見た目だというのに、そんな人懐っこくて癒やし系な笑みを浮かべられたら、かのハカリコでも。

(……どうしよ、ギャップ萌えで心臓が)

 ドキドキが止まらななかったから。

 ああ、顔が熱い。

 くそ、なんなんだ、この美少女は。

 この私が、志賀路ハカリコが、ここまで乱されるなんて――


『魂は複製できないよ、志賀路ちゃん』

 霧島はハカリコの問いかけに、きっぱりと答えた。

『……そもそも、魂って何なのかイマイチわかってないんですけど』

 目を凝らせば、体の奥に感じられるそれ。

 赤かったり青かったり黒かったり四角かったり丸かったり、誰ひとり同じものを持っていないのはわかるが、そもそもアレは何なのか。

『魂っていうのはあの世への通行の際に必要な識別マークみたいなもんだよ。それをこの世の人間が勝手にこの世界でも個人識別に使ってる。あの世人には私たちが見ているよりも明確に区別がつくんだろうけどね』

『それで、あの世人が複製されたら困るから高度なプロテクトを掛けてる、と』

『ああ。厳密には魂の複製そのものは可能なんだけど、複製が成功した瞬間に元の魂も含めてふたつとも蒸発するんだ。たとえ魔界とこの世界くらい距離を隔てててもね。だから、魂の複製は不可能さ。……安心したまえ、いくら首から上が変わろうともあの子は首藤ちゃんだよ』

『……じゃあ、泉の底に首藤さんの元の首が意識を持ったまま沈んでるみたいなことは?』

『ないない。……それにこうも言うだろ、三つ子の魂百までって。これは三つ子は長生きするとか、赤ん坊は三秒で魂が定着して死ぬまで変わらないとか、そういうのじゃなくて――』

『――わかってますよ、人の性質は早々変わらないって、そういう話ですよね。たとえ首から上が変わっても、首藤さんは変わらないって』

 そうだ、三つ子の魂百まで。

 人の性質はそんな簡単に変わらないのだ。

 だというのに、だというのに――

「あ、おはよう、志賀路さん!」

 なぜミユキはここまで元気に挨拶してくるのだ。

 朝の通学路、校舎前の長ったらしい坂道。

 ミユキが、とても元気にハキハキと、しかもこちらから挨拶してくる。

 昔の彼女といえば、もっとローテンション極まりなかったのに。

 ただそれだけのことがハカリコにとってはあまりにも違和感を伴うものだった。

 見た目の変貌も相まって、本当に誰かわからない。

「……おはよう」

「どうしたの、元気ないけど?」

 そのまま、流れるように隣に並んでくる。

 以前なら挨拶もこれも、ハカリコがやっていたこと。

 やはり違和感バリバリであった。

「ううん、元気だよ」

 少なくとも体は。

 しかしそれにしても、近くで見るミユキは相も変わらず美少女であった。

 伸ばされた黒髪が、キラキラと陽光に照らされてまばゆい。

「……ところで首藤さん」

「なあに志賀路さん?」

 だが、そんな美少女に、違和を抱く部分がひとつだけ。

「もう頭の羽動くし、首の接合も治ったんだよね?」

「うん。首が変わったときからね。羽根も立派になったし、また飛ぶ?」

「いや、そうじゃなくてさ。だったらそのマフラーつけなくていいんだよ? 暑くないの?」

 そう、かつてミユキにプレゼントした、赤と黒のチェック、ハカリコのお下がり。

 こんなに暑いのに、一体なぜ彼女は未だに付けているのだ。罰ゲームか。

「そりゃあ、暑いけど。でもさ、せっかく志賀路さんにもらったんだから付けたいよ。駄目かな?」

「……ッ」

 微塵の照れも見せずに、ミユキは笑顔で重いことをのたまった。

「……そ、そうなんだ」

 気温やマフラーとは関係なしに、ハカリコの顔が熱くなる。

 これでは立場が真逆だ。

「と、ところでさ、首藤さんが行った泉の女神がいる世界ってどこにあるんだろうね」

 だからハカリコは、話題を無理矢理に変える。

「……うーん、私もわからないんだよね。あれから探したけど、全然見つかってない」

「首を受け取ったら次の瞬間には元の場所に戻ってたんだっけ」

「うん。本当ならこの坂道にあるはずなんだけど、見る影もない」

「あったら色々できそうだよね。ゴミを投棄してるだけで大金持ちになれちゃう」

 なんてことのない世間話。

 これで顔を赤らめる必要も、ペースをかき乱されることもない。

「あは、それもそうだね。でも、お金はいいかな。私には志賀路さんがいるから」

「……は?」

 と思ったら、またこれであった。

「今の見た目にならなかったら、きっとこうやって志賀路さんの隣に並べなかったから」

「そ、そんなことないと思うけど」

「そんな事あるよ。このマフラーも前は似合わなかったし。志賀路さんに相応しくなれただけで、それで十分……って、ちょっと気持ち悪かったかな?」

 はにかむミユキ。

 ハカリコは、先程以上に顔が熱くなった。

「どうしたの、顔赤いけど。熱でもある?」

「ひゃっ」

 言うが早いか、そのときにはもうハカリコの小さな額に触れていた。

「ん、普通だね」

 みるみるうちに赤くなっていくハカリコとは対称的に、ミユキは笑顔でうなずいた。

 もう一度言おう、これでは立場が真逆である。

 しかしそれでも、目を瞑れば確かに、そこにはミユキの魂があった。


 首藤ミユキは、美少女になってよかったと心底思う。

 あれからいつも、目覚まし時計が鳴るよりも早く目を覚ます。

 目を覚まして、以前は置く気にもならなかった化粧台の前まで移動。

 そこには、未だ自分のものだと信じがたい、サラサラな黒髪の、大きな瞳の美少女が映っていた。

 人を威圧する、癖っ毛三白眼女は、もうどこにもいない。

 そうだ、美少女は朝起きて最初に見るものが自分の顔の時点で勝ち組なのである。

 そして自分の美貌に自信を持つということは、すべての行動を大胆にさせる。

 目付きの悪い癖っ毛女という枷が無くなることで、『私みたいなやつが……』という気持ちは雲散霧消した。

『そりゃあ、暑いけど。でもさ、せっかく志賀路さんにもらったんだから付けたいよ。駄目かな?』

『そんな事あるよ。このマフラーも前は似合わなかったし。志賀路さんに相応しくなれただけで、それで十分……って、ちょっと気持ち悪かったかな?』

 だからこそ、こんな以前だったら逆立ちしても言えないことを言えてしまう。

 ただ素直に自分の気持ちを表せる。

 それだけでも、ミユキは自分が美少女になってよかったと、心底思う。

 しかし美少女には美少女なりに苦労することがあって――

「わあ、たくさん」

 昇降口、靴箱を開けると、いくつものラブレターが落ちてきた。

 漫画の中でしか見たことがない、扉を開いたらボロボロ出てくるやつである。

 無論、全てがミユキ宛。

 そう、美少女特有の苦労とはまさしく、この山のようなラブレターであった。

「さすがの私もここまで告白されたことないって」

 まじまじと靴箱のそれを見つめながら、ハカリコは呆れたようにつぶやく。

「まあ、きっと物珍しさもあるんだろうけど」

 いいながらも、ひとつひとつ丁寧に鞄に入れていく。

「それ、ちゃんと返事するの?」

「うん。まだ全然出来てないけど」

「すごいね。どう見ても冷やかしにしか見えないよ。……だいたい、顔が変わったら即告白って」

「そうかもだけど、もしかしたら真剣かもしれないし、適当に扱うのは可哀想だよ。それに、ちょっとうれしいし」

 嘘だ。

 本当はちょっとどころか、めちゃくちゃにうれしい。

 それこそ、苦労を余裕で埋め尽くして見えなくするくらいには。

 たとえ相手が顔しか見てなかろうとも、顔を赤らめて好きですと言われたら、もうそれだけでうれしくてうれしくて仕方がなかった。

 すでに今までの人生の数百倍ちやほやされているのに、まだ足りないくらいに。

「でも断るんだよね?」

「まあね」

 知らない相手と付き合うなんて怖いし、特定の相手と付き合ってこの承認天国が尽きてしまうのも嫌だ。

「あ、おはよう、首藤さん」「おはよ」「おはようございます」

 なんてことをしていると、クラスメイトたちが挨拶してくる。

「あ、おはよう」

 変わったことはいくらでもあるが、ミユキとしてはこうやって挨拶されるようになったのが大きな変化だと思う。

「いいよねえ、ふたり並んで歩いてるとさ」

 そんな中、ひとりの女子が話しかけてくる。名前は覚えてないが、おそらくはハカリコと仲の良いクラスメイト。

「なんか仲良し姉妹みたいな感じで」

「姉妹て。私が小さいからってこと?」

 不服そうに頬を膨らますハカリコ。

 かわいい。

「違うよ。首藤さんが大人のお姉さん感半端ないってこと」

「……大人のお姉さん」

 やはり、いざ面と向かって言われると結構うれしいものだ。

 かつてのミユキならば老けてると解釈していただろうに。

「そういや連絡先交換してなかったね」

 流れるように彼女はスマホを取り出して、ミユキの前に差し出す。

「えっと、いいの?」

「ん、何が?」

 なにはともあれ、ミユキはこれにてハカリコ以外の女子の連絡先を晴れて入手する。

 ある意味では、告白よりも何よりも、うれしかったかもしれない。

 なにせ、ハカリコ以外の友達ができたのだから。


 昼休み。

 かつてのミユキはひとりさびしく教室の隅でご飯を食べたものだが、今は違う。

 今のミユキは、友人たちと教室で昼ごはんを食べていた。

 すなわち、近くの人様の机を不法占拠する暴挙である。

 ミユキはそれが怖くて昼休みの間自分の机から離れられなかった。本当は校舎裏とかそういうひとりになれるところが良かったのに。

 だと言うのに、今はミユキが不法占拠する側に回っていた。

「……ねえ、ずっと気になってたんだけどさ。その首、結局何なの?」

 いかにも今どきの女子高生といったふうの、栗色の髪をショートカットにした、少しばかり背の高い女子。

 朝連絡先を交換した彼女――鴻巣が視線を注ぐ先には、ハカリコそっくりな首があった。

 いつもミユキの近くをぷかぷか浮いてる、泉の女神が寄越した片割れ。

 ミユキ的にはもう空気みたいなものだったが、他の人はそうでもないらしい。

「さあ、わかんない。でもつねっても何しても無反応で、目を開けることさえしないんだよね」

「ついでにいうと、魂も感じないね」

 ミユキの説明に、ハカリコが補足する。

「ますます謎だ。ていうか、なんでハカリコそっくりなの? 泉の女神はハカリコの知り合いか何かなの?」

「それも謎」

「謎しかないじゃん」

 謎だらけだった。

「あー、それなら一応仮説があるんだけど、聞いていくかい?」

「気になります」

「私も」

「そっか。じゃあこのコロッケもらうね、志賀路ちゃん」

「いや待って、前後がつながってないっていうか、そもそもそれ――」

「――私のコロッケ!」

「美味しいねえ、見知らぬ健康優良児ちゃん。毎日たくさん食べてこれからも面識がないように頑張りたまえよ」

 見やれば素手で鴻巣のコロッケをむしゃむしゃ食べる、白衣に単眼の女性。

「「……なんで来てるんですか、霧島先生」」

 昼休みの教室にはまずありえない闖入者――すなわち霧島に、ミユキとハカリコのジト目と声がかぶった。

「なんでと言われれば、たまたま見かけたのと、ひとりでご飯が寂しいのと、首藤ちゃんが気になったからだよ。保健医だからね、生徒の健康には気をつけないといけないのさ」

 手についたコロッケの衣をベロベロ舐めながら霧島は言う。

 とても学校の教室で保健医がすることには見えなかった。

「私は元気ですし、ここじゃなくてよくないですか」

「いやあ良かったよ。首藤ちゃんに志賀路ちゃん以外にも友達ができて。こんな娘だけど仲良くしてあげてね」

「は、はい」

「お母さんですか。ていうか無視しないでくださいよ」

「で、話はさっきの志賀路ちゃん二号に戻るけどさ」

「その言い回しやめてください」

「多分泉の女神は志賀路ちゃんの知り合いってわけじゃなくてさ」

 ハカリコの言葉を無視して、霧島は続けた。

「単純に首藤ちゃんの頭の中を覗いただけじゃないかな」

「……つまり、美少女といえば今の首藤さんかハカリコだって、前の首藤さんは考えてたからこうなったって、そういうことですか?」

「うんうん。ぷにぷにだね、志賀路ちゃん二号」

 彼女(?)の頬を突きながら、霧島はうなずいた。

「……」

 ああ、ミユキだってそれくらい自覚している。

 けれども、友達を理想の美少女だと認識していたというのは、いくら事実でも指摘されると照れくさい。

 それも、本人の前でされるなら、なおさらだ。

「ゲフンゲフン。……それで、魂を感じないのはなんでなんですかね、先生?」

「こっちもまあ仮説だけど、頭はもともと両方とも空っぽで、胴体に付けたら首藤ちゃんの意識や魂が宿るんじゃないかな。というわけで、やってみてよ」

 ずずい、ハカリコ二号を霧島が差し出す。

「え」

「いいじゃん。どっちつけろって言われたわけじゃないんでしょ?」

 言われてみればそうだ。

 なんとなくハカリコと全く同じ顔だから避けていたが、別に取り替えていけない道理はないのだ。

(ていうか、こっちのほうが可愛いし)

 そう思って手を伸ばそうとしたら、

「いやいや、やめたほうがいいよ、そっちの黒髪のほうが可愛いし!」

 他ならぬハカリコがそれをひったくった。

 凄まじい速度であった。

「……そ、そうかな」

 やたら強い剣幕で自分そっくりの首を抱え込む姿は、かなりシュールで唐突。

 皆、正直引いていた。

「とにかく、やめたほうがいいんだってば! そんなことよりほら、もっと気になることあるでしょ!? 例えば泉のある世界はどこにあるとか!」

「……確かに。私も美少女とかお金持ちになりたい」

 ハカリコの言葉に、鴻巣が同調する。

「ふむ、それについては私が教えてもらいたいくらいだよ。ここ数日捜索してるけど、全く見当たらない。……ただし、一度異界に行くと、異界に引き寄せられるようになる、なんて話がいくつもの文献にある。つまり、首藤ちゃんは以前魔界に行ったからたまたま辿り着けただけで、私たちみたいな一般ピープルには辿り着けないかもしれないね」

「えー」

「……でもその理屈だと、私はもう一度行けても良くないですか? 一回どころか二回異界に行ってるわけですし」

「私も魔界に行ってますけど、影も形も見当たらないんですが」

 霧島の言葉に、ミユキたちふたりが反論する。

「なるほどねえ。たしかにそうだ。もっと特殊な条件があるとか、あるいは入り口そのものが移動してて、もう二度と出会えないとか」

「えー」

「さっきから随分残念そうだね、健康優良児ちゃん。たしかに私も首藤ちゃんの首をもう一度泉に突っ込んだらどうなるとか気になるけども。もっと上の超・超絶美少女になるのかな? あるいはそれとも――」

「いや絶対やりませんからね」

「……しかし、だ。少し考えてみたまえ、たかだか正直なだけで金の斧銀の斧をプレゼントする異界の女神。こんなヤバいのと関わるのはいくら何でもリスクが大きすぎないかい? 一体どんな反動がやってくるか」

「それ、本人の前で言います?」

「言っただろ、首藤ちゃんの健康が気になるって。どうだい、体調は?」

「最高です」

 いいながら、親指を立てた。

 そうだ、何もかも最高すぎる。

 美少女になって心底良かった。

 みんなにモテモテ。

 友達も新しく出来た。

 ハカリコとも仲良くなれた。

 そして何より、自分に自信を持てるようになった。

 すでにあの忌まわしい、癖っ毛三白眼も陰キャコミュ障もいない。

 何一つ、問題などなかった。

「……そうかい、なら良かった」

 だからミユキは気づかない。

「……」

 最近のハカリコの様子がおかしいことも、自らの身体に起こっている異変も、何もかも。

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