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23 斑天馬



 ガチャ…!


「弾倉となる神留石を上部のソケットに差し込み、右手でグリップ、左手で銃身を握り、バットプレートを肩に当てて、照準を固定する。あとはこのトリガーを引けば…」


 ドゥン! …ズガァン!


「このように、銃身から射出された神力弾が、回転しながら高速で飛弾し炸裂する。火属性なら炸裂した後に燃え上がるし、水属性は氷結させる。風は雷撃、地は炸裂の威力が高い。光は超高速の弾丸で、闇は不可視にしといた。まぁ、状況に合わせて使い分ければいいよ。ああ、弾倉一つにつき、十発くらい撃てるから」


 ティアスの城壁の外で、完成したライフルの説明を行なって見せる。マーク君とトニー君は、あっという間にライフルの扱い方をマスターした。



 ずっと行くとヴェルフィート山脈に突き当たり、エストランドへと南下する東の街道脇で、道端の岩や木々に向けて次々と神力の弾丸を命中させる。一応安全も考え、城壁からは数十メートルほど離れた場所だ。


 トニー君は百発百中。片手で撃っても狙いを外すことがない。マーク君はトニー君が炎弾で燃え上がらせた木を、氷結で凍らせて鎮火させたり、応用を利かせている。思ってた以上の使い熟しっぷりだ。


 ときおり街道を行き交う隊商や旅人、または城壁の上を巡回中の兵士が、あんぐりと口を開けながら、そんな二人を愕然と眺めていたが…気にしたら負けなので、見なかったフリをした。


「このチャージソケットも、何気にカッコいいですね。ロードリングに接触して装着することで、リングを通して神力を補充できるってわけですか!」


 トニー君が空になった神留石を、ガチャンとグリップから取り外し、左腕に装着した魔導具のソケットにガチャリと差し込む。一連のその仕草も、イケメンのトニー君がやれば、なんとも様になって見える。


 一見、籠手のように見える魔導具だが、ロードリングの理に干渉し、そこからロードの神力を使って補充できる仕組みだ。籠手の内側には六つのソケットがあり、それぞれの属性に対応している。三十分もあれば、一〜二発分くらいの神力を補充することが出来るし、過剰に充填されないようにリミッターも設置済みだ。


 一般人が使ったら一気に神力切れを起こして大変なことになるだろうが、マーク君とトニー君はこれでも中級ロードだ。徐々に神力が溜まっていくという仕様にしてあるし、一軍隊を壊滅させようとでもしない限り、神力切れを起こす心配もないだろう。マーク君はトニー君に比べて神力量が低いみたいだが、その辺りも抜かりはない。ちゃんと考えてある。


斑天馬(はんてんば)、ちょっとおいで」


 ヒヒィーン。と軽く嘶き、ここに来るまでに乗って来た斑天馬が駆け寄って来る。マリカの加護を受けた例の白馬だ。いや、牛柄だけど。


 鞍に括りつけておいた荷物を解き、十二のソケット付きの太いベルトを取り出す。


 鞍に固定するようにして斑天馬の胴体に巻きつけると、身体を守る役目も果たしつつ、斑天馬から神力を補充する、馬タンク式チャージソケットの完成だ。


 マリカの加護のおかげで、無駄に神力を持て余している斑天馬だ。こっちは一分もあれば一発分は補充できる。二人でこれに乗って戦うスタイルにすれば、極悪暴走コンビが誕生することだろう。


 ちなみに懐中電灯も作ったけど、それは斑天馬の鞍に取り付けてある。使用するには光の神留石を装着しないといけないが。


「全部で二十四の神留石を作ったけど、今のところはこれが限界だ。壊さないように使ってよ?」


 うん。ライフルとチャージソケットの開発で、資金はほとんど使い果たしてしまった。


 未だ簡易魔法の買い手は、ちらほらやって来るけど、最初の頃の勢いはない。資金が貯まるまでは、とりあえず魔導具の開発はお預けだな。


 今のところ弾丸の種類は六種類だけだが、組み合わせや理の編成を弄ると、様々な効用を設定することが出来る。火炎放射とか、風と炎の混合弾とかね。水蒸気爆発も可能だろう。早く資金貯まらないかなぁ。


「了解です!」「大事に使います!」


 口々に言いながら、斑天馬に二人乗りして走り回らせ、楽しそうにガンガン撃ちまくるマーク&トニー。


 城壁の上や関所の門付近に人集りが出来ていて、唖然とした顔でそんな二人に視線を向けていた。


 …よし。よく見たら辺りの景色が大変なことになってきている。魔獣でも暴れたかのようだ。


 怒られる前に帰ろう。



 

「お利口さんですねー。これからもシュウ様のお役に立つのですよー」


 マリカが精一杯手を伸ばして、斑天馬の首をよしよしと撫でている。


 マーク&トニーが散々撃ちまくり、神留石の充填で、斑天馬もかなりの神力を消耗したはずだが、全然堪えた様子はない。これはもう魔獣と言ってもいいレベルだろう。


「役に立てなかったら食べちゃいますからねー。…一口でペロッと」


 さらっと怖いことを言うマリカ。


 やめてあげて! お馬さんマジびびっちゃってるから! 視線を逸らしてガクガク震えちゃってるから!


 すっかり子供達の遊び場と化した宿屋横の路地裏で、置かれた木箱や、マリカが勝手に設置したベンチに腰かけて、マーク君の差し入れの菓子パンを皆んなで頬張る。


「すごい武器ですね。流石はシュウ様です。光の弾丸とか、私でもよけるのに苦労しそうでした」


 どうやらマリカ、斑天馬の目を通して、試し撃ちの様子を見ていたらしい。


 そんなこともできるのか。便利なもんだ。


「ここからまだまだ改良できるけどね。まぁそれより先に、今度は神力の剣を作ろうと思う。神留石の出力調整は、ライフル製造で技術が確立したから、必要に応じてショートソードからバスタードソードくらいまで切り替えられるようにできる。刀身を効率良く構成できる技術させ確立させれば、同時に槍も完成したも同然だね」


 そっちはバルートのおっさんとセラお姉さん用だ。相当な戦力アップが図れるだろう。


 ……どう考えても、戦力アップは必要だ。


 レインティアを救うためには、ノウティス帝国の軍隊を相手にすることになる。その中には、それこそマスタークラス、S級の実力者も含まれているだろう。


 こんな玩具くらいじゃ、心許ないくらいだ。


「この国を救うため…なんですよね?」


 考え込んだ俺の顔を見て察したのだろうか。マーク君が真面目な顔で言った。


 マーク君とトニー君には、直接レインティアが滅びる話はしていなかったけど…バルートかマリカにでも聞いたのだろう。


 そういうところは、この二人は抜け目がない。おちゃらけてるように見えて、ちゃんとしている。俺なんかよりずっと…。


「…まぁね。自分達だけ逃げるわけにはいかない。マスターロードになれば尚更、責任ものしかかってくる。今さら部外者面できないからさ」軽く笑って、スックと立ち上がる。


「ま、なんとかするよ。とりあえず魔導具は、もうちょっと資金が集まってからになるけど。他にもやることはある。まずは…」


 言いかけて、腰にボフっと抱きついてきた子供の頭を撫でながら、マーク君達に視線を戻す。


「落ち着いたら、青の軍神ストル・フォーストに会いに行こうと思う。いざってときのために、ビズニス軍とも連携が取れるようにしておきたい。戦力は多い方がいいからね。ウィル・アルヴァも見つけ出しておきたいし、それに…」と、今度はマリカに視線を向けた。


 マリカがキョトンとした顔で小首を傾げる。


「…ラグデュアルも捜し出そう。あいつほど貴重な戦力はいない」


 途端、マリカの表情がスゥーと陰った。


「ラグが必要ですか…?」呟くように言う。


「…納得できないか?」


「いいえ。シュウ様が必要だと仰るなら…」


 憂鬱そうに斜め下を見つめながら、マリカは一瞬、唇を噛み締めるようにした。


「でも、私には必要ありません。私はシュウ様がいいです。ラグはいりません」


 バッと顔を上げて、真っ直ぐ俺を見る。


「それは構わないけど…。まぁ、見つかると決まったわけではないし、そのことはラグデュアルを見つけてから考えよう」と、気楽に笑いかけてみせる。


 マリカはちょっとだけ笑顔を浮かべた。


「そうですね。もし見つけたら、一発どかーんとマリカスペシャルです」


 マリカスペシャルかー。光闇風の魔法を駆使した、マリカウルの最大技だったっけ。


 おいおい、死ぬぞラグ。


「お、シュウさん。バルートが来たようです」と、不意にトニー君が、路地の向こうから歩いて来るバルートのおっさんを見つけたらしく、立ち上がってブンブンと手を振った。


「バルート、見ろよこれ! ついにライフルが完成してさ、さっき試し撃ちを…」


 言いながら、トニー君の口調が徐々に沈んでいった。


 バルートの態度が、明らかにおかしかったからだ。


 元々無口で無表情な男だが、いつにも増して怖い顔をしている。


 怒っているわけではなさそうだ。むしろ思い詰めているような、絶望しているような…言ってはなんだが、バルートらしくない、すごく情けない顔つきだった。


 …これは、何かあったな? 思い、口を開きかけたその瞬間、


「シュウ殿! お願いがございます!」


 と、バルートがいきなり地面に突っ伏した。


 …OH! ジャパニーズ、ドゲェザ!


 日本人ながら、土下座なんて初めて見たぞマジかバルート!?


「姉御を助けてやって下さい! 周りはもはや敵だらけで…シュウ殿しか頼れるお方がいないのです!」



 

 

「ロード資格剥奪、レインティア追放、ついでにギルド破門状ねぇ…」


 バルートからセラお姉さんに下される処分の話を聞いて、腕組みしつつフゥーっとため息を吐く。


 どうやら今回の任務失敗により、アレスフォースのクラン序列は、四位へと下がってしまう見込みであり、査問会の幹部連中はルードを筆頭に、セラお姉さん一人に責任を負わせる形で、重い処分を下そうとしているらしい。


「上級資格剥奪ではなく、ロード資格剥奪!? ティアスじゃなくてレインティア追放!? 重すぎるだろそれ!」トニー君が驚愕の声を上げた。


「しかもギルド破門状って…完全にロードとして活動出来なくなるじゃないっすか!」と、マーク君も続く。


「気がついたらそういう流れになってしまっていて…姉御を庇う者はもう誰一人としておらず、完全に孤立してしまっています」バルートがガックリと肩を落とした。


 うーむ…。ロード資格剥奪ということはロード協会が決定することであり、レインティア追放となると国家が決めることだろう。つまり、ロード協会にも国の組織にも、ルードの息がかかった者がいるということになる。


 ギルド破門状というのは、出されてしまえば、どこのギルドにも所属できなくなってしまうもので、これを破って破門状が出された者を引き入れたギルドは、掟破りとして他のギルドから徹底的に叩かれる。下手をしたらロード協会の依頼も受けられなくなってしまうだろう。


 だからこそ、仲間殺しでもしなければ、まず出されることはないくらい、重いものだ。


 今回の任務では死者こそ出たものの、セラお姉さんが自ら手を下したわけでもないだろうに…。


 というか、一番隊隊長のアレスト・フォギーは何をしているのだろう。セラお姉さんの口振りからして、ルードとは違ってまともな人物のように思っていたのだが、そういうわけでもないのだろうか。


 バルートに訊くと、「アレスト様はおそらく、何も知らされていないと思います。全てルードの独断でしょう。このままでは今日の午後にも、正式に処罰が言い渡されることになると思われます」…とのことだ。


 そうか…。どうあっても、セラお姉さんを貶めることに心血を注ぐわけだ。査問会はギルドの総意であり、下された裁決は決定事項だ。一度裁決を下してしまえば、アレストの一存で後から取り消すことも出来ないだろう。


 たかが振られたくらいでそこまでのことをするとは…呆れも度が過ぎると、怒りも湧いて来ないんだな。妙に冷静だ。


 冷静に、ただ許せないだけだ。さて、どうしてくれようか。


「マーク…トニー…ちょっと耳貸せ…」


「え? あ…は、はい!」


「な、なんですか?」


 マーク君とトニー君と、今後の作戦についてヒソヒソと打ち合わせをする。


 マリカが側で聞き耳を立て、勝手にフンフンと頷いていた。


「それじゃあ…査問会に乗り込もう。手筈通りにな?」


「「了解です!」」



 

 さぁ、ルード君。

 


 待っていたまえ。

 


 

トニー君の方が神力が高い理由。

孤児である彼は、父なる神の加護下にあります。

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