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20 アホの子同盟



 セラお姉さんとバルートのおっさんは、査問会の準備があるからと、アレスフォースの本部へと戻って行った。


 なんでも、セラお姉さん達の他に生き残った別の荷馬車隊からも、ロード協会の通信器を通して、ポツポツ連絡が入り始めているらしい。


 通信器とは、ロード協会の集会所に設置されてある魔導器の一つで、使用料は高額だけれど、竜脈の流れを利用して、遠く離れた場所と音声、又は映像で繋ぐことができる。テレビ電話みたいなもんだ。


 竜脈だけでなく、無線・有線の送受信器もあって、そっちは比較的近距離──精々が国内程度に限られるが、かなり割安で使用できる。もちろん、ウィルの開発品だ。


 魔導器には他にも様々な機能があるが、そちらは取りあえず置いておくとして…


 セラお姉さん配下の三番隊の面々からも、いくつか連絡が入っているという。まぁ、マリーフィードをショートカットした俺たちとは違って、大きく北に回り道しなければならないため、ティアスに到着するには、まだまだ時間がかかるらしいが。


 とにかく。上手いこと纏まって欲しいものだ。セラお姉さん一人に責任が押しつけられるってのも、あまりに理不尽すぎる。



 ──バルートのおっさんが呼んでおいてくれた馬車に乗って、一人で宿へと帰る。料金は先払いでセラお姉さんが払ってくれた。


 四人乗りの馬車で、座席に一つずつドリンクが付いていたけど全部、美味しく頂いておいた。


 だって三十分で百ゴールド。一万円だよ!?


 若干腹ポテになりつつ、氷をガリガリと噛みながら馬車を降りると、宿の横手の路地でマリカと子供達が、ワイワイ遊んでいるのが目についた。


 マーク君とトニー君の姿もある。どうやらもう、集会所での用事とやらは終わらせてきたらしい。


「シュウ様! お帰りなさい!」


 最初にマリカが俺に気づいて、シュンっと瞬間移動するように、俺の胸に飛び込んできた。


 はやっ! これ、マジでシルヴァ程度じゃ捉えることもできないぞ。味方で良かった。


「お帰りなさいシュウさん」「試験、どうでした?」


 ワイワイ群がって来る子供達を、順に高い高いしていると、マーク君とトニー君がニコニコ顔で話しかけてきた。


「それがさぁ、聞いてくれよ」


 ロード協会で起こったことを話す。


 試験が二度手間なこと。そして、ルードとかいう小者の話。


 マーク君とトニー君は、納得したかのように深々と頷き、


「悪い噂ばかりですもんね、あいつ」


「俺も嫌いです。何度か飲みに誘われましたが、全部断りましたよ」


 口々に言った。


 やっぱり嫌われてるのねあいつ。


 なんでも、今回のセラお姉さんのことも、一枚噛んでるのだとか。自分は遠征に参加しなかったのをいいことに、自身の副官が元々の責任者だったに関わらず、責められる側ではなく、責める側に回っているんだという。


 セラお姉さんと別れた後にも、有る事無い事、悪い噂を垂れ流したり、セラお姉さんの評判を下げることに、躍起になっていたらしい。


 …あの野郎。もう二、三発くらい、無慈悲に蹴り上げとけば良かったか。


 それにしても、ホントに気楽なもんだね、この二人は。そう思いながら、子供達と一緒に遊ぶ、マーク君とトニー君を見やる。


 責任のない立場だからだろうけど……いや、違うか。


 マーク君とトニー君が、そういう性格だからだ。でなければ、俺とこんなに気が合うことも、なかっただろうしね。


「ところでシュウさん。これからどうするんですか?」


 隣でブヒンと嘶く、馬の鬣を撫でてやりながら、トニー君が訊いた。


 そうだなぁ……って、


 …馬!? ああ、一頭だけ置いていかれちゃったあの馬か。まだ居たのね。


 ていうか、白馬じゃなかったっけこいつ?


 なんか、背中や足に黒い斑点ができてて、牛柄になっちゃってるんですけど…。


「キャハハ! どぅどぅ!」


 ピョコンと馬の背に飛び乗ったマリカが、他に二人の子供を乗せて、パカパカと路地裏を走らせて回る。


 ……こいつ、加護を与えやがったな? まぁ、別にマリカの勝手だからいいけど…。


「そうだな。取りあえず試験は、早くて一週間後、A級ロードの誰かが任務を終えて、ティアスに戻って来てからになるらしい」


「あー。そういえばアレスト様も、魔獣討伐の任務で、ティアスにいないんでしたね。それで…試験に受かってからですけど、ギルドはどうするんですか?」


 と、トニー君が言うと、マーク君がその隣に並んで、


「僕達さっき、アレスフォースを抜けて来ました。今は完全フリーのロードです」言ってアハハと笑った。


 マジかこいつら! 


「まぁ、抜けて来たと言っても元々、正式なメンバーじゃなかったんですけどね。姉御の下に入ることが多かったですけど、俺とマークは三番隊の構成員ってわけじゃなくて、雑務隊のメンバーだったんで」


 うん? 雑務隊? 初耳だな。そこんとこちょっと詳しく。


「ええっと…簡単に言えば、一〜三番隊の各部隊の任務のとき、頭数合わせに割り振られる、中級ロードの部隊です。名目上は四番隊扱いになってはいますが、リーダーがいないんで、四番隊としてクエストを受けることはなくて…まぁ俺とマークは、二人で小遣い稼ぎのクエストは受けていましたが」


 ほほう。派遣社員みたいに、一時的に配属される臨時メンバーというわけか。大手ギルドとなると、そういう運営もあるわけね。


 なるほど。そりゃあ、立場的に責任も軽いわけだ。お気楽なのも頷ける。


 バルートと違って査問に呼ばれてないのも、三番隊のメンバーじゃないからってことか。ルードの標的は、セラお姉さんこと三番隊だろうからね。


「シュウさん。僕とトニーは、シュウさんの下につきたいです。僕らはシュウさんのことを、実の兄貴のように思ってます」と、マーク君が実に嬉しいことを言ってくれる。


「お前ら…」思わずジーンと涙腺が緩む。


「っても、俺もマークもシュウさんと同い年ですけどね。バルートの奴も、シュウさんが同い年だと知って喜んでましたし」と、トニー君がケラケラと笑った。


 へぇー、同い年だったのか! そりゃまた…


 …………………え?


 今、すっごい不吉なこと言わなかったか?


「ちょっと待て。バルートのおっさんが、なんだって?」


「え? いやだから、俺らが皆んな同い年と知って、すごく喜んでました。尚更、親近感が増したそうですよ」と、こともなげに言ってのけるトニー君。


 ま…マジかぁぁぁっ!!?? あのおっさんが同い年!? あれで!?


 ズガァァン!と脳天に衝撃が走り、思わずクラクラと目眩がする。


 なんという強力な精神攻撃! この世界に来てから、一番の深いダメージを負ったわ!


「バルートも、いずれは合流したいそうです。まぁバルートは正式な三番隊のメンバーなんで、姉御次第、とは言ってましたけどね」と、今度はマーク君が付け加える。


 まぁそれは頷ける話だ。逆にこの状況でセラお姉さんを一人にしてこっちに来るような奴なら、有無を言わさず蹴り飛ばしてやるわ。


 …そんな奴じゃないってことは分かってるけどね。だからこそ信頼してるわけだし。でなければ今だって、こんなとこにいないで、セラお姉さんについてってるよ。


「そうかー。あの老け顔で同い年ってのは納得できないけど…」と、腕組みしてため息を吐く。


 次からはバルート君と呼ぶべきか。……いや無理だ勘弁して。


「それで、やっぱりギルドは結成するんですよね? 名前とかもう決めてるんですか?」


 マーク君がワクワクした顔で言った。


 ギルドねぇ…。そこまでは考えてなかったけど、ロードとして活動するなら、いずれはそういうことになるだろう。


 だが今はまだ、そこまでやるには早計、ってところか。その前にやることがあるからな。


「今はまだ、ギルドを作るつもりはない。当分は個人として活動しながら、二人にはその手伝いをしてもらいたいかな」と、ちょっと申し訳なさそうな顔をしてみせる。


「そうなんですか? まぁ、俺らはそれでも構いませんけど。なぁマーク」


「そうですね。でも手伝いって、何をすればいいんですか? やっぱり、クエスト受けたりするんですか?」


 あっけらかんとしたマーク君とトニー君。


 別にギルドに拘りがあるわけではないらしい。多分俺と同じで、楽しくやれればそれでいいんだろうな。


「とにかく、当面やることは二つだ。一つは仲間を集めること。もう一つは、魔導具の開発だな」


 と、ビッと二本の指を立てる。


「魔導具ですか…。仲間を集めるってのはまぁ分かるとして、魔導具の開発ってどういうことですか?」マーク君だ。


 ふふふ。聞いて驚け!


 と、マーク君とトニー君に、魔導具開発の構想を話して聞かせる。


 まずは手始めに、明かりを灯す魔導具の開発。これについて大事なのは、いわゆる電池となる部分の、神力を貯蓄できる特殊な魔導石の開発だ。


 正直、明かりを灯す蛍光灯的な物だけなら、既にウィルが開発して、ロード協会の関連施設に配備されている。


 魔導石というのは元々、ある程度の神力が内蔵されている。だが、それは人や魔獣、竜族など、生物が持つ神力に比べたら微々たるもので、持続的に明かりを灯したりできるほど大きなものではない。


 父なる神ウィルは、それを竜脈に干渉して繋げることで、継続的に神力を供給することを可能とさせたわけだが…それでは、懐中電灯やランプみたいに、携帯型として使用することはできない。あくまで固定式だ。


 そしてその電池となる魔導石…そうだな、神留石(しんりゅうせき)、とでも名付けようか。その神留石を開発することができれば、その後、様々な魔導具へも流用することができる。


 ざっと思いつくだけでも、携帯型の通信器、または通信の中継地点も簡易的に設置できるようになるし、ライターやコンロのような発火装置、冷蔵庫などにも流用することができるだろう。


 現在、魔導器のように竜脈に繋げて運用されている魔導具は、コストも高く、竜脈に干渉できるほどのシィルスティングの使い手も数少なく、ロード協会の関連施設、または協力体制にある国家の重要施設くらいにしか設置されていない。


 もし神留石の開発に成功すれば、それがもっと一般的に普及できるようになるだろう。


 無論、最初はそれなりのお値段になるだろうから、お金持ちの王族や貴族、豪族らしかお買い求めはできないだろうが。…最初はね。


 ただ、それを勝手に普及させていいものか、という疑問はある。いずれ誰かが開発するだろう品物だ。そこに生じる利益を、俺が奪ってしまうことになる。


 だからまぁ、作るのは自分達が使うものだけで、売りに出すかどうかは、ウィルに出会ったときにでも問題ないか聞いてみればいいと思う。


 ウィラルヴァに聞いてもいいが…面白がるだけの無責任な答えしか、返って来ない気がするからなぁ。ウィルも似たようなものな気はするが。


 ま、その辺りは、セラお姉さん達とも相談しながら、慎重にやっていくこととしよう。 


 そして、神留石が完成することは、すなわち…


 ロードが搭乗して戦うことのできる機動兵器、魔導機スティングアーマーの開発の第一歩だ。


 …え? そんなにスティングアーマーを作りたいのかだって?


 当たり前だ。これほど夢があることが他にあろうか! いや、ない! 断言できる!


 マーク君達も、これには大いに賛同してくれた。


「マジぱねぇっす! さすがシュウさんっす! それがあれば、僕でも最前線で戦えるってことっすよね!」


「俺は神留石を使った魔導具に、興味がありますね。高性能の弓とか作れませんか?」


 マーク君もトニー君も、それぞれに思うところがあるようだ。


 任せておきたまえ。決して悪いようにはせんよ。


「とはいえ、完成には時間がかかるだろうけどね。スティングアーマーに関しては、完成するかどうかも怪しいし。ただ、神留石を使用した武具は、すごく現実的だと思う」


 ワンチャン、マシンガンとか作れたりしないだろうか。…出来そうだな。弱点特効も考えて、火、水、地、風、光、闇の属性を持たせた神力の弾丸を射出して……同じ原理で、弓の制作も可能だろうし。バルートのおっさん用に、ビームサーベル的な剣を作ってもいいし。セラお姉さんは槍使いだったっけ。


「ふむふむ。だいぶ構想が固まって来たな」


 顎に手を当て考え込む。マーク君とトニー君が、期待のこもった目で、そんな俺を見つめていた。


「そのためにまず、無駄に大量にある簡易魔法を売り捌いて、資金作りしないといけないんだ。あと、魔導石ってどこで手に入るか分かるかな?」


「魔導石ですか。うーん…一般には出回らないものですからねぇ。一応、調べてみます」と、マーク君がビッと敬礼する仕草を見せた。


「じゃあ俺は、簡易魔法の販売ルートを作って来ます」と、トニー君もノリノリで頷く。


「お金が必要なんですか? お財布から貰って来ましょうか?」と、いつの間にか隣に立っていたマリカが、キョトンと首を傾げた。


「いや、マリカのお金は、ホントにいざってときのために取っておこう。何があるか分からないからね。

 なぁに、その内ロード協会の依頼も受けれるようになるし、そうなったらガンガン稼いで行こう。全ては尊い夢のために!」


「「「夢のために!!」」」


 皆んなで…事態をよく理解していない子供達まで混ざって、円陣を組んで、決意を新たに掛け声を挙げる。


 …なんかその中に、白黒の馬まで混ざって一緒にヒヒーンと嘶いていたけど、とりあえず気づかなかったフリをした。



 

 こうして、俺達の揺るぎなきアホの子同盟が結成されたのだった。

 

 

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