第九話
そしてついにイベント当日が来ました。イベントは現実時間で3時間、ゲーム内時間で半日に渡ります。イベントが始まるのは現実時間だと12時なので少し前にログインします。
私はログインすると店に飛ばされますからリューくん達には店の中で待っていてもらっています。
「セロムさん、ついに今日っすよ!」
「こんにちは、皆さん。確かこの後は申し込みをしたプレイヤーのみが特殊フィールドに飛ばされるのですよね?」
「そうだ。リフ、どんまい」
「スルーするなんてひどいっすよ!」
「リフは仕方がありませんが、少し不足していますね。特殊フィールドでイベントが始まる前にゲームマスターから説明があるそうです」
ゲームマスターからの説明はドロップ品の詳細などらしいです。本来説明の内容はプレイヤーは知らないらしいのですが何故知っているのでしょうか?ベルルダちゃん……。
『これより第1回ワールドイベントを開始いたします』
私が次の瞬間見たのは人で溢れかえった草原でした。すでに特殊フィールドのようで始まりの草原とは全く雰囲気が違いますね。辺りを見渡すと隣にリューくんが、少し離れたところにベルルダちゃんとリフくん、ヒナタちゃんとヒカゲくんがいました。
「皆さん!この度はご参加くださり誠にありがとうございます。今回のイベントモンスターは〝エレクトリカルバッド〟〝ファングトータル〟に加え、各エリアにボスモンスターが存在しています。あとは配信いたしました情報通りです。今回のドロップアイテムはモンスターの素材に加え、スキル書も含まれております!それではこれより第1回ワールドイベントを開始致します!」
歓声が湧き上がった途端にベルが鳴り私達はパーティ単位でランダムに飛ばされました。私達は何処かの森の中にとばされたようです。
「マップを確認したところ、ここはアルカナの森っていうらしいぞ?」
「アルカナの森ですか?神秘っていう意味だったはずですね。嗚呼、そういえばスキル書って何ですか?」
「スキル書っていうのは使うだけで登録されているスキルを会得できるアイテムだ。ベータの時は滅多に手に入らなくて高額で取引されていたんだ」
「だからあんなに……」
「そうですね、それよりもセロムさん。とりあえずの拠点を作ろうと思うのですが何か案はありますか?」
辺りを見回すと少し遠くに洞窟があるのが分かりました。それを伝えると1度行ってみることになりました。洞窟ですからエレクトリカルバッドがいる可能性が大だとの考えです。エレクトリカルバッドはその名の通り電気蝙蝠だそうです。
「薄気味悪いところだな、っ!全員戦闘態勢をとれ!」
その声が引き金となりエレクトリカルバッドが私達に飛びかかってきます。すばしっこく飛び回る蝙蝠にリューくん達はなかなか苦戦しています。私は今回は戦うなと言われているんです。どうもこのイベントは中継が配信されているらしく目立ちたくないなら戦わない方が良いとのことでした。私は目立つのは嫌なのでこのイベントはサポートに回るつもりです。
「ドラグ!私とヒナタで角に追い込むのでそれを倒してください!」
「了解!」
「風の精霊シルフよ、我が魔力に風の加護を与えよ。大いなる風の力で敵を捕らえよ!」
ベルルダちゃんの魔法でエレクトリカルバッドの足を風で捕らえて角に吹き飛ばしました。逃げようとする蝙蝠をヒナタちゃんが弓矢で貫きます。
「これなら行けるっすよ!【スライダー】からの【鎌鼬】!」
「調子にのるなよ!【五段切り】」
リフくんは盾術スキルのアーツと武器スキルを使い、リューくんは剣術スキルのアーツを使いました。ヒカゲくんは空中で足を捕まえられて暴れている蝙蝠の胴体を串刺しにします。
洞窟一帯のエレクトリカルバッドを倒し終わると1番奥に拠点を作ります。かなり戦ったので耐久値の確認をすることになりました。
「ドラグくんの剣をこちらに」
「おう」
リューくんの大剣はそこまで耐久値は減っていないようです。これならばイベント中は持ちそうですね。他の方のも確認して最後の1人のリフくんのを見だ途端、私は目を見開きました。
「リフくんのは少し大変ですね。ギリギリ持つかわからないです。今、直してしまいましょうか?」
「良いんすか!でもその間どうしたら」
「それならリフは修理が終わるまでここでセロムを守っててくれ。お前確か剣も使えたよな?」
「ドラグほどじゃないっすけどね」
「充分だ。俺達はこの洞窟の周りを見て回り、ついでにファングトータルとボスの情報も集めてくる」
リフくんに予備の剣を渡してリューくん達は洞窟から出て行きました。耐久値を回復するためには鍛え直すことが最も有効です。少し手間はかかりますが。これは出来る方もいると事前に教えてもらったので大丈夫です。目立ちません。多分。