ドーレ会議
俺は目の前のLIFEトッププレイヤーと話していた。目の前の男は間違いなく、今、LIFEをプレイするユーザーの中で一番強い。それは、全LIFEプレイヤーが口を揃えて同じ意見を出すだろう。そう思わせるのは彼の異能力「流星」が原因であろう。「流星」。広範囲への攻撃に加え、一点に集中させた攻撃も可能であり、工夫を加えさらに万能性を増した戦いが可能となる。その評価は「未来予知」を超えるSSランク。さらに、LIFEにSSランク持ちは二人のみと言われているが、カサラクともう一人は不明なためカサラクが最強と評されるのだ。
「まさかLIFEトッププレイヤーがあなただったなんて。ギースの人間がそんな地位にいていいんですか?」
少量の嫌味を込めたその言葉を倉坂は気にせず、話し始める。
「ははは、僕は君が「未来予知」持ちのプレイヤーだと分かっていましたがね。あなたの能力もかなりやばいと思いますが。まぁそんなことはさて置いてこの会議も私が仕切る事になっているので、じゃあ」
と言って倉坂は立ち上がった。
前に出た倉坂、カサラクは60人のプレイヤーの前で話し始める。
「私はカサラク、現実では現在AI対策部に所属している。えー、みんな聞いてほしい。ここに集まってくれたみんなはLIFEに置ける高ランクプレイヤー達ばかりだと聞いている」
分かっていたことをあたかも今知ったかのような口ぶりで話し始める。倉坂のこんな性格を俺はどうも気に入らない。
「率直に言おう。AI達が暴走を始めた現実、この状況を打開できるのは我々LIFEプレイヤーを除いて他にないと考えている」
「「「そうだそうだー」」」
多くのプレイヤーから賛同の声が上がる。
いや、そのために集まったのだろう。
「そこで、我々はこのLIFEで使っているプレイヤーを現実世界に出現させる方法に辿り着いた。だが、一度の出現には人数に限度がある。今のところ、その限度は30人。二回で全員を送れるのだが、二回目の出現には5日ほどの時間がかかる」
なるほどな。
静まり返った酒場に倉坂の声だけが響く。
「君たちのなかから30人を今日、現実世界に送りたいと思っている、君たちの力ならば五日は持ち堪えられると信じている、志願する者はいるか」
最後の一言で静まり返った場は活気を取り戻す。我こそがと立ち上がる。もちろん俺は志願などしない。様子見だ。
「ありがとう、ここまでの志願者が出るとは思っていなかったよ、本当にありがとう。じゃあ僕から見て左から順に30人に先に行ってもらおうと思う。他のプレイヤー達は五日間ゲーム内で出来るだけのレベル上げをして現実に飛ぶ、いいかな」
その時はまだ、誰もがこの先の未来が上手く行くと考えていた。ただ一人、「未来予知」を持ったプレイヤーを除いては……。