白雪姫と王子様
これは白雪姫のもう一つの物語。
誰も知ら無い遠い御伽話。
待ってて、君を助けるよ。
待っててKISSで目を覚ましてあげるから。
毒リンゴを食べた少女。白雪姫。
運命なんて誰も分からない。だから。
「白雪姫。またお会いできましたね。」
『そうね。王子様。』
密かに隣国の王子様と会っていた。
それは許されない行為。
お母様は私の事を酷く扱うのです。
王子様とも会うのも結婚も許してはくれません。
そしてついに恐れていた事が起きたのです。
『鏡よ鏡。あの子をどうすればいいのかしら?』
「お屋敷の最上階の展望台に監禁してはどうでしょうか?お妃様。」
『まぁ!それはいい案ねぇ。家臣家臣よ!』
『なんでしょうか?お妃さま。』
『白雪姫を展望台に連れて行きなさい。そしてドアに鍵を閉めるのです。』
『分かりました。』
家臣は部屋を出て行った。
『鏡よ鏡…この世で一番美しいのは誰かしら?』
「……それは白雪姫でございます。」
怒り狂ったお妃は地下室の厨房に行き毒リンゴを作った。
「フフフッ…。白雪姫はこれで目は覚めないわ。」
『白雪姫。お屋敷に戻りましょう。』
珍しく家臣が迎えに来た。
いつもは母様の傍に居るのにな。
「王子様。また会いましょう。」
家臣の馬に乗りお屋敷に戻った。
それは罠などとは知らずに。
『白雪姫ゴメンナサイ。』
腹部に走る痛み。
「っあ…なんで…。」
薄れて行く意識の中で叫んだ言葉。
「王子様助けてっ!」
『白雪姫…。』
その日私は囚われの身になってしまった。
意識が戻るとガラスの棺の中に居た。
「っ…ここは?」
『あらぁ。私の可愛い白雪姫。』
お母様が目の前に居た。
「お母様。これは?」
『これをお食べなさい。そしたら教えてあげるわ。』
目の前には熟した真っ赤なリンゴ。
美味しそうで一口かじってみた。でも、味がない。
その瞬間体がしびれて行った。
言葉も話せなくなり苦しくなった。
『死になさい…白雪姫。』
ガラスの棺の中で私は死んでしまったのだろう。
王子様…私を助けてください。
王子Side
白雪姫と出会ったのは今年の春。
森の花々が美しく育つた時期だった。
すると花畑で花を摘んでる少女と目が合った。
馬から降りて少女に近寄ると美しい顔が俺の顔を染めた。
「初めまして。私は白雪姫。そう言われてるの。」
特に用事はなかったが声をかけられた。
『白雪姫は一人なんですか?』
「えぇ。お母様が遊んでくれないから。」
悲しそうに俯く白雪姫。
『もしよかったら、毎日ここで会いませんか?』
とっさに口から出た言葉。
「喜んで。」
それから毎日この花畑で喋った。
約束を破らずに毎日と。
でも、白雪姫は俺の目の前から姿を消した。
あの、家臣と言う存在が来てから。
何かが可笑しいと思う探しに行くことにした。
森を馬で走っていると森を抜けた先には大きいお屋敷が森の半分を埋めていた。
偶然にも白雪姫を連れて帰った家臣が居た。
駆け寄って問いかけてみた。
「私は隣国の王子だが白雪姫のお屋敷か?」
家臣は焦る表情を見せながら言った。
『白雪姫は死んだ。』
「何故だっ!」
無意識に胸を掴んでいた。
『っ…殺されたんだ!今は展望台の部屋で寝てるはずだっ!殺さないでくれ!』
殺された…。その言葉を聞くと無意識に駆け出して居た。
お屋敷の中に入ると部屋が沢山あり迷ったが展望台は屋上にあると確信した。
階段が駆け上り白雪姫の元へと急いだ。
KISSで目を覚ましてあげるよ。
そんなことはありえないけど。
けどいいんだ。愛しているんだから。
夕暮になっても展望台へつく気配はない。
屋敷の者しか知ら無い近道があるとは知ら無かった。
「白雪姫…。」
長い階段で足は疲れて行く。
それでも、白雪姫を助けたいんだ。
ようやく最後の段まで近づいた。
なんで私はこうなってしまったの?
体は動かない。音は聞こえない。目は開かない。
暗い空間が私の体を蝕んでゆく。
命の鼓動が消え失せる前に助けて王子様。
お願い。
お願いKISSで呪いを解いて。
「白雪姫っ!っ…はぁはぁ…。」
最後の階段を登りきりたった一つの大きい扉を開けた。
ガラスの棺の中には愛おしい白雪姫。
近寄るとそっとKISSを落とした。
その時、白雪姫の目がゆっくりと開いた。
「王子様…。」
『白雪姫!良かった。』
二人は抱き合ったがそれを引き裂こうとお妃が現れた。
『許さない!』
お妃が刀を私の頭上に振りかざした。
それと同時に王子様が短剣でお妃の腹を刺した。
「白雪姫に手を出すな。」
『おのれ…許さんぞ!グフッハハハハッ!』
笑い声をあげるとお妃の体は砂になった。
王子様の短剣は深くに刺さっていたらしい。
体が完全に消えるまで抜けなかったから。
「王子様っ!」
『白雪姫…行きましょう。』
「はい。」
私は手を取り王子様のお屋敷で結婚式をあげた。
そして末永く暮らしました。
『起きろ…なぁ。起きろ。』
「ん…お兄ちゃん…。」
目を覚ますと「白雪姫」の本。
幼い時から読んでてボロボロ。
なんか懐かしい気持ちになるんだ。
それは誰も知ら無い事。
『また白雪姫…そんなに好きなのか?』
「うん…。懐かしい気持ちになるから好き。」
『へぇ~。って飯だ。』
「分かった。」
『ほらご飯よ!』
お兄ちゃんの彼女のご飯。
嫌だな。
「いただきます。」
一口食べた瞬間にイスから私は落ちた。
息が出来ない。
彼女の不気味な笑み。お兄ちゃんの叫び声。
「っああああっ…!」
苦しい。喋りたい。
『しっかりしろ!」
「お…兄ちゃん…。」
意識が薄れて消えた。
そう私は現世の白雪姫。
私は永遠の眠りに落ちるのだ。