4話 出航
僕とミキが抱き合った頃には既に太陽が昇り始めていた。
「今日、いやずっとあなたの家に泊まってもいい?」
ミキがとんでもない質問を交わした。
12歳の少女が、家出をするんだもの。
でも、『夢』に比べれば、小さな事か。
『夢』それは、
人を生かすために悪人をこの世から消し去る。
でも、それは、どんな理由があろうとも
『殺人』
なんだ。
僕がこれから殺す『富裕層』のように…
僕も……『富裕層』の仲間入りか。
誰かに憎まれ殺されても仕方ないか。
「カイトは悪くないよ!悪いのは富裕層よ!
それより、おうちいってもいいでしょう!!
」
「あ、うん、ミキの親がいいっていうんだったらいいよ」
僕は、普通の人間が言うであろうことを普通に言った。
「私……両親に捨てられ、養護施設からも捨てられたからさ、
昨日まで『独り』だったんだ」
『独り』……か。
そうだ、僕はこの娘に会わなければ、
僕は昔っからずっと『独り』だったんだ。
そいえば、
僕は自殺した前世の
中学時代から、いじめられていたなあ、
僕は昔のことを思い出していた。
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部活動の時は上司にいじめられ、
いつも日陰に追いやれれていたなあ。
上司は僕の顔を見る度面白がって、
「死ね、ヘタクソ、お前は見学!」っていつも言ってた。
そして、後輩だけでなく、
友達だと信じていて、
幼稚園から仲良く遊んでいた『同僚』
や、後輩からでさえも、僕を見てあざ笑う。
『同僚』は、僕を裏切ったんのか?
それとも、僕は裏切られて当然の人間
なのか?
そんな疑問に襲われた。
僕は野球部だった。
野球部では、陰でこのことを
『キチガイ遊び』と呼んでいたらしい。
僕をからかうのが楽しかったんだろう。
『キチガイ遊び』は瞬く間に学校中に広まり、全校生徒にまでに知れ渡った。
それからというもの。、
僕は、いつも学校で飼っていたペット同様にからかわれた。
いやもっとひどかった。
学校に味方がいないのだ。
親は僕を無理やり学校に連れて行った。
僕の顔を見るのが嫌なのだろう。
アニメとかだったら、もうとっくに
ヒーローが助けに来ているはずだけど、
来るはずもなかった。
正義って所詮は大多数の方で
少数派は悪。
つまり、僕は、雑魚の敵で、僕以外の生徒は全員ヒーローってことだ。
同僚や後輩たちはいつも僕に
「お前は、バカ、アホ、死ね!
言い返したら、センパイにチクるよ。
そうすれば、もちょひどくなるよ!」
って言ってくる
「ごめんなさい。それだけはやめてください。」
僕はいつも、僕は悪くないのに土下座した。
僕は、生きているだけで有罪なのか?
そう思ったところに、
「はは〜〜いい気味だ。ざまーー」
とトゲのような一言が頭上から飛んでくる。
言葉というのは、暴力より痛い。そう感じた。
100回殴られるのと、
この言葉では、この言葉の方がはるかに痛かった。
中には、言葉なんか痛くないと思う人もいるかもしれない。
でもそれは違う!
「死ね!」と本気で言われると、本当に死にたくなる。
「ヘタクソ」と言われると、自分の今までの
全てを否定されたような気分、
もしくは、自分の大事なもの全てを失った
気分になる。
言葉というのは、最高級の人間が作り出した人間専用、
『殺人兵器』なのだから。
言葉で、人間の生死を左右できる。
すごいだろ。
でも僕は我慢した。
永遠というものは存在しない。
僕にだって、いい人と巡り合えて、
幸せに生涯を過ごせるかもしれない
と思っていたから
だから、
僕は、中学の頃自殺しなかった。
でも、幸せになれないと社会人になって
ようやくわかり、自分で幕を下ろしたんだ。
そう、耐え続けた結果、『無視』されたのだ。
反応がいつも同じだとつまらないのだろう。
弱い悪の敵……そう、すぐにヒーローに負けてしまう敵は必要なかった。
だから、僕は『独り』になった。
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僕とミキは家に帰っていた。
おばあちゃんの事だ、別に家族が増えても文句は言わないだろう。
「ミキは僕を他の人のように『独り』にしないの?」
歩いている途中、僕はつい言ってしまった。
まだ、僕は、ミキのことを信用しきってなかったのかもしれない。
ミキは立ち止まり、
「カイトはミキのことをしつこい女だと思っているの?」
ミキは声を荒げた。
「いや、そんなわけ……」
僕は必死でさっきの発言を取り消そうとした。
「じゃあなんで、そんなこというの!
私じゃ頼りないの?
私は、カイトを、孤独から救うために、
1回人生をやり直して、そして、孤独の地に
12年間もいて、
やっとカイトに会えたと思ったのに……
そんなこと言うなんて、」
ミキはいつの間にか泣き崩れていた。
どうだ、ミキは僕のために、こんなにもたくさんのことをしてくれたんだ。
僕だけのために、辛い人生をやり直してくれた。十分、『いい人』じゃないか!
そんな人間が僕を『独り』にするはずがない。なのに僕は何てことを言ってしまったのだ。
「ごめんなさい。
約束する。僕とミキはいつまでも一緒だ。」
僕は決心した。
これから、何が起きても、
僕とミキは生き残って平和な世界になったら
一生、二人で暮らそう。
「ありがとう、ミキは……やっと『独り』
から抜け出したんだわ。」
「さあ、もう泣かないで、帰ろう。」
僕は、ミキに手を差し伸べた。
家に帰ると、もちろんおばあちゃんはミキを
家族として迎えてくれることを許可した。
「ありがとう、おばあちゃん。」
「別に、いいよ。あなたたち、ここには好きなだけ泊まってもいいわよ。
別に、子供2人育てるなんてたやすいことだから。」
僕とミキは部屋に向かった。
「支配帝国には、どう向かうの?」
僕は、聞いた。
「飛行機のパスポートはなんとかするわ。
でも、あそこは、今危険だから、少し手前で降りて、そこからは、歩きになるわ。」
「それじゃあ、行くのは簡単か。」
「僕は何をもってけばいい?」
「武器は基本現地調達だから、まあ、簡易的な食料とか。でも、武器は、そこまで使わないはずよ。
使うのは毒とかよ。
だって、暗殺だもの。」
「武器はあくまで護身用ってこと?」
「そう、毒は、ミキが、なんとかする。
これでも、12年間もこの地で生き残って切ったんだものこれくらいできるわ。」
ミキが自慢気に話していた。
「それじゃあ、いつ出発する?」
僕は尋ねた。
「約1ヶ月後の3月15日でいいかしら?
他のことはその日までになんとかする。」
「わかった。」
僕たちは昨日
何事もなかったかのように学校に登校した。