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支え

僕は、布団の中で、寝ていた。

そうしたら、ある女の人が部屋の中に入って来た。だいたい60歳くらいのおばあちゃんだ。

「坊や、なんで道端に倒れていたんだい。親に捨てられたのかい?」

そうだ、僕は、12歳の『坊や』となってここに送られてきたんだ。

「うん、僕は、親に捨てられたんだよ。」

僕は、嘘をついた。

一度死んだなんて言えなかった。

「そうかい、それじゃあ、婆の子供になるかい?」

僕は驚いた。こんな赤の他人を子供にしてくれるのか。そう思った。

「おばあちゃん、僕がいると迷惑じゃないの?」

僕は尋ねた。

「いや、そんなことないよ。もし嫌になれば、出ていけばいい。

それまで、面倒見てやる」

「ありがとう、ところで、ここは何処なの?今、西暦で何年?」

突拍子のない質問だったが、おばあちゃんは答えてくれた。

「ここは、東北の田舎じゃよ。

今は、2092年1月12日じゃよ。」

僕は、近くの大松小学校に通うことになった。そこで、僕は、前世の名である

飛田 魁斗と名乗った。

それからだ、いつも誰かが後ろをつけている人がいるような気がした。

僕は、夜中、近くの公園に行き、

「僕をつけている奴、いい加減に出てこい!」

と言った。

これは、本当は、僕の勘違いで

誰もつけていないということを確認するためにやったことだった。


「よくわかったね、飛田くん。

いや、『カイト』。もしくは、

こう呼ぶべきかな、元天才外科医

高木(タカギ)浩輔(コウスケ)先生」

僕は、驚いた。

まず、本当に誰か僕のことを尾行していたこと、

次に、それがあの美人で成績優秀な

本多(ホンダ) 美紀(ミキ)だったことだ。

ミキとは、学校で会ったくらいだったから

なおさらだ。

そして、ミキは急に僕に抱きついてきたのだ。

「会いたかったです。コウスケ先生」

ミキが言ったが僕は、

「僕は、カイトだ。コウスケではない!

それに、なんで今まで僕を付きまとってたんだよ!」と言い、僕はミキから離れた。

「実は、あなたは、3回人生をやり直しているの。一回目は高木浩輔として、生まれた。


高木先生とある少女・・の昔話をしてあげる。」

そう言ってミキは随分と長い話をした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

彼は、仕事熱心だった。いつも医師仲間ではなく、自分の患者と話していた。

他の医師は、自分の仕事まで、看護師になすりつけているのに対して彼だけは、

自分の仕事はもとより、

看護師へのアドバイス、

患者とのコミュニケーション、

『見捨てられた患者の手術』、

など、

もう、過労死してしまうくらい働いていた。

でも、彼はいつも患者を助ける事に満足していた。

患者や多くの看護師たちも、彼のことをとても信頼していた。

そんなある日、

一人の12歳の少女が病院に運ばれてきた。

彼女は、心臓に腫瘍があった。

医師たちは、手術不可と判断して、

みんな彼女を見捨てた。

彼女は、もう私は、死ぬんだと病室でずっと泣いていた。

そんな時、『彼』が彼女のところに

診察しに来た。

「お嬢ちゃん、具合悪くない?」

「先生、私、私、もう死ぬんでしょう。

私、

三ヶ月しか生きられないんでしょ。

お医者さんが話しているのを聞いちゃった」

彼女は泣きながら言った。

「まあ、

普通のお医者さんはそう言うかもしれない。でも、

僕は君を助けられるかもしれない。

もし、君が生きたいのなら僕に賭けてくれないか?

僕は、人を救うために医師になった。

だから、僕は、どんなことをしてでも、

君を救いたい。

だから、今は、泣かないで。」

「ありがとう、先生。先生は私を見捨てないのね」

彼女は嬉しかった。彼女は絶望という闇の中に

『彼』という光を見つけたのだ。

「1カ月後、君を手術する。私は君を

絶対に救う。

その為に医師になったのだから」

「ありがとう、先生、手術が成功したら、私、先生みたいな生きる希望を与えてくれる良いお医者さんになる!」

「それは、嬉しいな、じゃあその為にも今死ねないな。」

彼はそう言って、

嬉しそうに帰っていった。

彼は、彼女の為に、毎日夜遅くまで、

病院に残り、

難しい論文を読みあさっていた。

手術の10日前には、彼の目は隈だらけだった。

「先生、大丈夫?」

彼女が心配そうに彼に話した。

「患者さんに心配されるようじゃ、

医師失格だな!」

彼が冗談のように言った。

「そんなことないよ、先生。先生は立派なお医者さんだよ!」

彼女は彼に元気出して欲しかった。

彼女は彼に惚れていたから。


「そうだね、僕は君を必ず助ける!」

彼の目はとても綺麗だった。




手術当日、彼はすっかり元気になっていて、隈も取れていた。

手術は10時間もかかった。

もちろん手術は成功。

彼は彼女の命の『恩人』となった。


彼は、手術が終わったあと2、3日

病室で患者たちと寝ていた。

普通の人は2、3日も熟睡できない。

そう、彼は、

『死ぬ気』で手術に臨んだんだ。

それから、彼はいつものように彼女の所に訪れた。

「おめでとう、あと少しで退院だね。

退院しても、時々会いに来てよ。

医者というのは、患者を治すだけでなく、

『病気が治った人』を見守り続けることも仕事だからさ!」

彼は、本当に良いお医者さんだ。彼女はそう思った。


彼女が退院する時、彼はもうこの世にいなかった。

彼は、働き過ぎた事が原因で、

死んでしまった。

彼は、その事を分かっていたのか、彼の机の中から『遺書』が見つかった。

看護師が、その遺書を彼女の部屋に持ってきた。彼女は彼の遺書を読んだ。


『奇跡を勝ち取った(きみ)


もし、僕が死んでも、それは、

君が悪いのではありません。

僕の実力がただ足りなかっただけです。

もし、君が医師になったのならば、

僕の願いを叶えて欲しいのです。

1つは、君のような、

絶望していた人を救い、幸せにしてあげること。

もう1つは、『悪』に屈しないこと。


医師の中には、

『カネ』の事しか考えてない、

人なんて救おうとすら思っていない

悪い人がいます。

いや、そんな医師の方が多いかもしれない。それでも、だとしても、君が

もし、そんな医師にあったら、怒り、

そして、その医師を、君が大好きな

『良い医師』

に変えてあげてください。

最後になりましたが、

医師というのは、手術をする事や回診をする事だけが仕事ではありません。


人を救うことが医師の役目なのです。


バカな考えを持った人には、

必死で怒鳴り、考えを改めさせる。

それも、立派な医師の仕事です。

君を救った天才外科医より』


彼女は気がつくと泣いていた。

「先生、みたいな素晴らしい医師になって、先生の夢を叶えます」


彼女は必死で勉強して医者になった。

そして、

発展途上国の子供を助けるために海外に渡った。

そこは、内戦が続いている危険な国だった。

彼女はたくさんの子供を感染症やケガから救った。

でも、それから1年後彼女は不幸にも

子供たちを銃から守ろうとして……

死んだ。

「まだ、『彼』の夢は叶えていないわ。

こんな所で死にたくない。

せめて、『彼』でも守りたかった」

彼女はそう言って戦死した。

そうすると、死後の世界というかのような

真っ暗な空間の中にいた。

「お前は死んだのだ。」

何者かが彼女に話しかけてきた。

「あなたは…誰?」

彼女はそう尋ねた。

「私は、『神』だ。お前はお前自身の人生に

とてつもなく大きな悔いが残っている。

だから、

特別にお前に1回だけ人生をやり直すチャンスを与える。

ところで、お前は『彼』が好きか?」

彼女は「ハイ」と答えた。

「彼は2度目の人生を歩んだ

彼は、『医師であった記憶は必要ない。

2度目の人生は自分一人の力でやっていける』そう言った。

だが記憶を失った彼は、

人間が信じられなかった。

でも人間を愛したかった。

それゆえ彼は、孤独に耐え切れず自殺したんだ。

そこで、

彼は、2092年の『日本』に3度目の人生を歩みだした。

でもこのままだと『彼』は2度目と同じ過ちをしてしまう。

だから、お前が彼を救う為に、

2080年1月12日に生まれて、彼を救え!

彼は、お前が12歳の時、

必ず同級生としてお前の近くにやってくる。


もし、お前が、3度目の『彼』に医師だった『彼』の事を話すと、彼は、お前の事を思い出す」



気がつくと彼女は2080年1月12日にある家に生まれていた。

そして、12歳の時にある少年と出会った。

その少年は、『彼』と同じ目をしていた。

そう、その少年こそ『彼』の生まれ変わりなのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「まさか、僕が、その『彼』なのか?」

僕は、半信半疑だった。

「そろそろ思い出すはずよ!」

ミキがそう言ったその時、僕は全てを思い出した。

僕は、人を愛する『医師』だった。

「孤独だった僕を救いに来てくれたんだね。

ありがとう」

僕はそう言い、ミキと抱き合った。

「愛しています。コウスケ先生。いや、カイト」

僕は、幸せだった。孤独だった僕をずっと愛してくれていた少女(ミキ)がいたのだから。


僕は独りではなかった。












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