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「確かに、こんな裏事情を知ってしまった後では、あの手の歴史番組が白々しく思えるのも無理はないが」
少し寂しそうにヴァルゴが言う。
「ま、ドキュメンタリー番組なんて、みんな捏造だと思って見るのが正解ですよね」
お笑い番組に切り替えてから、アリッサは少し機嫌が直った様子である。
「何事も盲信せずに、一歩退いてから見る姿勢は大切だな。まったく、今回の件はいい教訓になった。付き合いの長い友人に、ずっと正体を隠し通されていたとは思いもよらなかった」
「親しい友達同士でも、隠し事の一つ二つ位はあるものですよ」
「君とリーガの間でも、かね」
「ああ、それは無理ですね。小さい頃から、お互いの手の内を知り尽くしてますから」
「どうでしょう。僕はアリッサの考えてることが、時々分からなくなりますが」
リーガがそう言って、爽やかに微笑む。
アリッサはそんなリーガを睨んでから無遠慮に指差して、
「こういうすっとぼけた奴です。でもこの手口で他人は騙せても、私は騙せません。そこにいるのかいないのか分からない、まるで妖怪変化の様な男ですが、私にはその禍々しい本性がはっきり見えますとも、ええ」
「おかしな惚気もあったものだな。それはともかく、話を大統領に戻そう。一番の懸念事項である『紙片』については、一応解決した。残るのは君達の事だ」
「私達が何か?」
「大統領は『紙片』を奪回する為に、君達を殺害する計画まで立てていた。それが失敗に終わり、全てが明らかになった今、大統領は君達からの報復をひどく恐れている」
「ああ、そういうことですか。それならもういいです。事情は全部分かりましたから」
アリッサが軽く手を振って言う。
「君達には怒る権利があるが」
「怒らない自由もあります。もう、けりがついたことですし、仲介役を買って出たヴァルゴさんの顔を潰すような真似は出来ません、ね、リーガ?」
「僕もアリッサと同意見です。これ以上、僕達に対して危害を加える気が無いのであれば、こちらとしても何もしようとは思いません。ところで、旧政府派が物騒な犯行声明を出していましたが、もちろん大統領は、今後の僕達の身の安全は保証してくれるのでしょうね?」
「ああ、あの犯行声明は、『紙片』の件を隠す為にでっちあげられたダミーだ。旧政府派を裏から操っているのが大統領である以上、何の意味も無いたわごとに過ぎない」
「脅迫されていた車掌さんの身の安全も保証してあげてください。ひどく怯えてましたから」
アリッサが思い出した様に付け加える。
「大丈夫だと思うが、念の為釘を刺しておく。他に何か大統領に対して要求する事は無いか? 迷惑料を請求しても構わない。大統領個人の懐から出させるから、税抜きでいけるが」
「それじゃ、父がやったのよりタチが悪い脅迫です。ああ、でもそれなら一つだけ」
「何を要求する?」
「大統領にこう伝えてください。『二十年前の内戦の様な、この国を揺るがす大事件が起こらない様に、表の顔でも裏の顔でも、全力を尽くしてください』と」
「それは、次期大統領選挙にも出馬しろ、と言う解釈でいいか?」
「いや、流石にそんな鬼の様な事は言いませんよ。大統領を辞任しても、色々な方面に影響力は持っているでしょうから、それをフルに使って、と言う意味です」
「分かった。早速伝えよう」
そう言って、ヴァルゴは自分の携帯電話を取り出す。
その時、テレビの画面には、年老いた夫婦漫才師が出ていた。
夫の方が「責任者出て来い!」と怒鳴って、大きな笑いを取っていた。




