◆22◆
「私も大体リーガの意見と同じだ。ただ付け加えるならば、個人的には、ヴォーンは『紙片』を既に処分してしまっていたのではないか、と考えている。もう持っていない物を、持っていないと説明するのも面倒なので、『あれはアリッサに懐中時計ごと譲ってしまった』、という風に見せかけたのではないかと」
ヴァルゴは封筒をちゃぶ台の上に置き、横目でちらと、テレビに映っているネコを見てから、
「いずれにせよ、その後もヴォーンへの監視が解かれる事はなかった訳だが。何事にも油断しない男だからな、大統領は」
「僕は、ヴォーンさんは『紙片』をまだ処分していないと思います」
リーガがヴァルゴの見解に異議を唱えた。
「ほう、なぜそう思う?」
「今までの行動パターンからの推測です。ヴォーンさんは、何か面倒事があると、何でもそのままアリッサに押し付ける傾向があります。だから、最高に厄介な面倒事である『紙片』も、何らかの形で、アリッサに押し付けられる日が来るのではないか、そんな予感がするんです」
「忌々しいけれど、私もリーガと同じ予感がしてなりません。時々、父は私に押し付ける為だけに、面倒事をどこかから探して来るんじゃないかという気さえしますから。ネコが狩った獲物を自分で処分せずに、わざわざ飼い主の元に押し付けに来る様に」
アリッサもリーガの意見に賛同した。
「ふむ、だがその面倒事である『紙片』が押し付けられたとして、君達はそれを世間に公表したいと思うかね?」
「いいえ、これ以上面倒事に巻き込まれたくありません」
「僕もアリッサと同意見です」
「ならば、どちらでも同じ事だ。それで『紙片』に関しては、大統領を安心させられる」
ヴァルゴはそう言って、表情を少し和らげる。
テレビ画面には、今度は紙をムシャムシャ食べるヤギの姿が映し出されていた。
「リーガ、もうそのテレビ消して。何かバカにされてる様な気がして腹が立って来たわ」




