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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第五章◆◆ 時計じかけの黒歴史

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◆16◆

 話は、執務室でヴァルゴがフェロン大統領と密談していた時まで戻る。


「その『紙片』に書かれているのは、私の名前だ」


 フェロン大統領は穏やかな、しかし決意を込めた口調で、そう告白した。


 ヴァルゴは、何か言おうとして少し口を開いたが、言葉にならず、執務室はしばらく静寂に包まれた。


「信じられん、そう言ってしまうのは、情報屋として敗北宣言に等しいが、そう言う他ない」


 ようやく言葉を取り戻したヴァルゴは、額に手を当ててそう言った。


「民間救助隊の隊長と言う肩書は、暗殺のプロ集団の首領にとって、非常に都合の良い隠れ蓑だった。片や人を救う職業、片や人を殺す職業。対極的な位置にある二つの職を、一人で兼任しているとは、普通は誰も考えない」


「恐ろしい組み合わせだな。それに、確かに対極的な位置にある職だが、一方に許された特権を悪用すれば、もう一方は極めて強大な力を発揮出来る」


「その通り。救助活動に紛れて人を殺すのも、様々な情報を収集するのも簡単だ。中立を装って、厳重に警備された場所にも堂々と入れる。入手し難い薬品も易々と手に入り、人員の輸送手段も最優先で確保出来る」


「悪魔の所業だ。だがしかし、君の救助活動によって、多くの人が救われたことも事実だ。内戦時、君自身が生命の危険に晒されたことも多々あった」


「プロの暗殺者は殺人狂ではない。仕事には全力を尽くすのがプロだ。表の仕事も裏の仕事も、仕事は仕事だ」


「私は君の表の仕事しか知らなかった、と言う訳だ」


 ヴァルゴが冷静さを装いつつも、少し忌々しそうに言う。


「私の裏の仕事を知っていたら、今、君はここにはいない。我々はそうやって秘密を守ってきた」


 フェロン大統領は、脅し文句とも取れる言葉を、何の感情も交えずに淡々と述べた。


「では、なぜヴォーンは殺さなかった?」


「勝てると思うか? あの『勇者』に。不可能を可能にしてしまう英雄に。人に面倒事を押し付けてのうのうとしていられる神経に」


「最後のは関係ないと思うが。落ち着け、ミディ」


 フェロン大統領はヴォーンの事を、よほど腹に据えかねていた様子だった。

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