表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第一章◆◆ 託児所の平和を守る者
9/104

◆8◆

 レットを見送った後、居間に戻ったアリッサとノルドは、再びちゃぶ台を挟んで話を続けた。


「親御さんにとって一番心配なのは、自分の子供が危険に巻き込まれるんじゃないか、ということ。災害とか事故とか誘拐とかね」

 アリッサがそう言うと、ノルドは驚いた顔で、

「こんな平和そうな村でも、誘拐とかあるんですか?」

「親は我が子を心配してもしきれない、って話よ。ま、この村で子供が誘拐された、なんて話は聞かないわね。村人全員がお互いを知りつくしてるし、みんな周囲のことによく目を配っているから。あなたみたいに外部から来た人は、もう村中の噂になってるわよ」

「じゃあ僕は、不審者扱いされてる訳ですね」

「レットさんが事情を知ってるから大丈夫。レットさんが郵便局に戻って、窓口のゲルンお姉さんに事情を話せば、ゲルンお姉さんが郵便局に来ているおばさん達にそれを伝えて、あっと言う間に村中に広まるから」

「おばさん情報網は、どこでも強力かつ迅速ですね。あまり正確じゃないのが、困ったものですが」

「だけどこんな田舎じゃ、不審者より自然災害の方が怖いわね。山崩れとか落石とか毒蛇とか熊とか」

「熊が出るんですか?」

「ここ一応、山の中だし。ウチには銃も用意してあるわよ。まあ、熊の話はいいとして、この時計なんだけれど」

 アリッサは、ちゃぶ台の上に置かれた懐中時計を手に取った。

「アリッサさんに直接渡して欲しい、とのことでした」

「父が武者修行をほっぽらかして、旅を満喫してたのは予想の範囲内だったけれど、この懐中時計に何の意味があるのか、さっぱり分からないのよね」

 アリッサは、鎖を持って懐中時計をびゅんびゅんと振り回した。

「新しいのを買ったので、これは娘に譲る、ということでしたが」

「今更譲られてもね」

 アリッサは、懐中時計を宙に放っては受け止め、放っては受け止めしながら答える。

「その時計を渡した時、アリッサさんがどんな反応をしたか、後で教えて欲しいとも頼まれました」

「何か意味があるのかしら、それ」

「とりあえず、『時計を振り回したり、放り投げたりしてました』と報告しておきます」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ