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面倒くさがりは、一息ついてしまうと、ついつい次への行動が億劫になってしまうものである。
アリッサとリーガは、夜遅くなっても中々寝ようとせず、居間でだらだらとテレビを見ていた。
電話が鳴ったのは、そんな時だった。
アリッサが座ったまま腕を伸ばし、受話器を取る。同時に、リーガがテレビの音量をミュートにする。
「はい、アリッサ・スルーです」
「アリッサか? ヴァルゴ・プレシオだ。夜遅くに電話してすまない」
「え、ヴァルゴさん? どうも、お久し振りです。七年位お会いしてませんが、その後お変わりありませんか?」
「元気だ。アリッサも元気そうで何よりだ。テレビで見たよ。それにしても、すっかり大きくなったな」
「あはは、見てくれてましたか。一回戦で敗退して、すぐにいなくなっちゃいましたけど」
「その後、厄介な事件に巻き込まれたようだが」
「ああ、本当に厄介でした。まあ、運が良くて、何とか無事です」
「実はその事件についてなんだが、少し聞きたいことがある。明日の昼頃、そちらで話をしたいのだが、都合は大丈夫だろうか?」
「ヴァルゴさん、道場に来るんですか? 夕方までは特に予定はないので、いつでも大丈夫です。あ、今ちょうどリーガも道場に滞在してますけど、邪魔なら追い出しますが」
「いや、いるならリーガも一緒で構わない。昨日の事件でも、彼が一緒だったんだろう」
「流石、情報屋さん、お見通しでしたか。報道だと、リーガは門人A扱いだったのに」
「情報屋はもう引退したよ。だが、とある筋から久々に仕事を依頼された。これ以上は電話では話せない」
「相変わらず、すごい世界に生きてますねえ。ギャング映画みたいです」
「ギャングが相手なら断ったんだがな。どうも、この国を揺るがす大事件に発展しかねない問題なので、仕方なく受けた」
「え、待って下さい、ヴァルゴさん。それは二十年前の内戦レベルの大事件ってことですか?」
「その通り。詳しくは、明日話そう。ではまた」
ヴァルゴはそこで通話を切った。
アリッサも受話器を戻し、一つため息をつくと、
「今の話、聞いてた?」
「うん、聞こえてた。ヴァルゴさんに会うのも、随分久し振りだね」
「リーガ、私、シェルシェさんに、あんな約束するんじゃなかったかもしれない」
「アリッサ。まだ内戦になると決まった訳じゃないから」
リーガはちゃぶ台ごしに、アリッサの頭を撫でた。
「私は犬じゃない」
苦々しげに言いつつも、アリッサはしばらく撫でられるままになっていた。
「お手」
「やかましい」




