◆17◆
アリッサもリーガも基本的には面倒くさがりである。
一方的な虐殺に近い戦いを終えた二人は、ある一つの問題に直面していた。
特別列車の到着まで、後数分。このままでは、線路に横たわっている六人の大男達が、皆轢死してしまう。
「一旦、線路の側溝まで転がして、そこに突き落としておこうか。一人先客がいるし」
まず、リーガが爽やかな顔で、ひどい提案をした。
「ダメよ。それじゃ、列車が停まっている間は回収できないし、その間に息を吹き返しでもしたら、逃げられちゃうじゃない」
アリッサがそれに対して、怪我人に対する何のいたわりもない理由で、ダメ出しをする。
「じゃ、仕方ないか。面倒くさいけど」
「うん、一人ずつホームに放り投げるしかないでしょ」
こうして、一刻も早い治療が必要な状態の七人の大男達は、二人がかりでホームに放り投げられることになった。
「せーのっ」
足側をアリッサ、肩側をリーガに持たれ、ブランコのように大きく反動を付けられてから、ホームに放り投げられていく大男達。
それは重傷を負った人間の扱いとしては、至極不適切なものだった。
全員を放り投げ終えて、アリッサとリーガがホームによじ上ったちょうどその時、特別列車の到着を予告するアナウンスがホームに響く。
やがて、十一番線ホームに特別列車が到着し、シェルシェと車掌が降りて来た。
「いったい、何をどうしたら、こんなことになるんですか?」
ホームに横たわる七人の大男達を見て、車掌が驚きながら言った。
アリッサは、人差し指で自分の頭をぽりぽりと掻きながら、
「まあ、色々です」




