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車掌の手によって、車両最後部の貫通扉が開かれ、固定された。
列車の轟音が、急に大きく聞こえる様になり、ラウンジ全体が喧騒に包みこまれる。
四角く切り取られた外の風景は暗く、全てが闇に吸い込まれて遠ざかって行くように見えた。
二本の光るレールが、その闇の中、はるか遠くまで続いている。
アリッサとリーガは、寒い日の朝に起きた子供の様に、毛布を頭から被り、扉から距離を取って立った。
「じゃあ、皆さん。また駅で」
そう言うや否や、リーガは勢い良く助走をつけ、開け放たれた貫通扉から飛び出し、そのまま横倒しに落ちて、毛布にくるまった状態で、線路の上をごろごろと転がった。
「行って来ます。すみませんが、扉を閉めておいてください」
アリッサも、すぐリーガに続いて同じ要領で外へ飛び出し、線路の上を転がった。
二人を吐き出した列車は、あっと言う間に遠ざかり、闇の中へ消えて行った。
転がる勢いを無くして止まった、二巻きの汚れた毛布が、線路上のそれぞれ離れた地点でむっくりと立ち上がる。
二人は、毛布を列車運行の妨げにならない様に、線路から離れた場所に投げ捨て、フェンスを乗り越え、並走する道路に出てから合流した。
無言のまま、お互いの顔を見て頷くと、そこから少し離れた場所にある中学校へと走って行く。
その中学校の校庭に、マントノン家の自家用ヘリが待機している手筈になっていた。




