◆10◆
アリッサの、車掌に対する尋問が続く。
「で、その紙切れを受け取る役目の男は、全部で何人?」
「七人です。変更が無ければ」
「武器は拳銃だけ?」
「分かりません。全員がサプレッサー付きの拳銃を持っていることは、確かです」
「銃声を小さくする長い筒を付けたアレね。そいつら、ガタイはいい方?」
「かなりいい方です。がっちりとしていて、全員、百九十センチ以上はあります。何と言うか、その、雰囲気が怖くて、たとえ拳銃が無くても、素手で簡単に人を殺せそうな感じです」
「目付きがやたら鋭くて、動作がきびきびしてて、油断してる感じが無いタイプ?」
「そう、それです」
「うん、大体感じはつかめた」
そんなアリッサと車掌のやりとりを見ていたシェルシェが、ふと横を見ると、いつの間にかリーガが、壁に埋め込まれた液晶テレビを点けて、インターネット画面に切り替えていた。
画面には地図の検索サイトが映し出されており、次の停車駅、つまりファリト駅周辺の地図が表示されている。
シェルシェの視線に気付いたリーガは、爽やかに微笑んで、
「シェルシェさん、すみませんが、マントノン家所有の自家用ヘリを、今から飛ばすことは出来ませんか? 夜間飛行になってしまいますが」
「出来ないことはありません。どこへ飛ばせば良いのですか?」
「ここから、ここです」
リーガは地図の倍率を下げて、その中のある二点を示した。
シェルシェは、一瞬驚いた表情になり、それからすぐにいつもの微笑を浮かべ、
「ふふふ、早速手配しましょう。でも、この件は警察に任せなくて良いのですか?」
「遮蔽物の少ない見晴らしのいいホームに、特殊訓練を受けたガタイのいい男が七人、拳銃持って待機してるんです。今から短時間で、警察に十分な対応が出来るかどうか疑問です」
アリッサが振り向いて、リーガの代わりにシェルシェに返答した。
「下手すると殉職者が出るかもね。何も出来ずに、取り逃がす可能性の方が大きいけれど」
リーガがアリッサに言う。
「第一、こんな途方もない通報を、警察がまともに取り合ってくれるかどうか。『次の停車駅で、七人の大男が拳銃を持って待ち伏せてるんです。助けてください』なんて」
「『そうですか、それは大変ですね。それはそうと、酔っぱらって降りる駅を間違えないように気を付けてください』って言われるね、多分」
「だから、リーガ、分かってるわね?」
「ああ、面倒くさいけど仕方ない」
「シェルシェさん、これからリーガと二人で、その大男達を倒しに行って来ます」




