表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第四章◆◆ 特別列車の帰宅困難者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/104

◆6◆

 リーガはトイレの後、ラウンジに戻らずに、寝台個室のある車両までやって来た。


 狭い通路を歩いていると、三十歳位の真面目そうな車掌が、アリッサ用の個室のドアを開けている所へ、ばったり出くわした。


「車掌さん、その部屋の客は今ラウンジにいますよ」

 リーガが車掌に声をかけた。

 

 リーガに気付いた車掌は、一瞬ぎょっとした表情になったが、すぐに愛想の良い顔になり、


「ああ、びっくりしました。全く人の近付く気配がしなかったもので。大変失礼しました」

「貸し切りの特別列車でも、切符を確認するんですか?」

「いえいえ、これはただのご挨拶のようなものです。本日は当列車にご乗車頂き、まことにありがとうございます。何かご要望がございましたら、お気軽にお申し付けください」

「では、一つ質問していいですか?」

「はい、何でしょう?」

 車掌が丁寧な物腰でリーガに応答する。


 リーガは車掌の制服の胸のあたりを指差し、いつもの爽やかな口調で、


「その大きな拳銃は何に使うんです?」


 車掌は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に戻り、


「いや、服の上から良く分かりましたね。護身用です。使うことはないでしょうが」

「見せてもらえますか」

「すみませんが、お断りします。そういう規則なので」

「そんな規則はありませんよ。この平和なご時世に、武器を持った車掌さんなんて見たことありません」


 車掌は何か言おうとしたが、急に厳しい顔つきになり、懐から長いサプレッサーの付いた拳銃を取り出して、銃口をリーガに向けた。


「手を上げて、向こうを向いてもらえますか」


 銃口を向けられて、リーガは言われた通り、おとなしく車掌に背を向けた。


 そして次の瞬間、リーガは相手に背を向けたまま、左手は車掌の顔面をがっちりとつかみ、右手は車掌の右手首を不自然な角度で捩じり上げていた。

 車掌は、突然視界が遮られた上に、顔と手に激痛が走り、何が起こったのか分からないまま、拳銃を床に落とした。


「あなたが何者なのか、目的は何か、なんてことは聞きません」


 そう言いながら、リーガは手を離して車掌の方に向き直り、拳銃を拾い上げた。列車の窓を少し開けて、隙間から、ぽい、とそれを外に投げ捨てる。


「余計な事はせず、最後まで普通の車掌さんでいてください。そうすれば、何も無かったことにしておきます。面倒事は嫌いなので」


 リーガは窓を閉めると、そのまま何事も無かったように引き返して行った。


 車掌は信じられないものを見たような表情で、痛む右手首をさすりながら、そのままその場に立ちつくしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ