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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第四章◆◆ 特別列車の帰宅困難者

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◆4◆

「ところで、シェルシェさんが言っていた、『もう一つの目的』とは、一体何だったんでしょうか」


 アリッサは、気を取り直してシェルシェに質問する。

 

「アリッサさんの護衛です」


 シェルシェは、少し真面目な顔になって返答した。


「護衛?」

「『伝説』を倒して名を上げようと、不埒なことを考える輩がいないとは限りません」

 シェルシェはそう言ってから、少しため息をつき、

「現に、身内がやらかしてますし。妹のパティのことですが」

「まあ、妹さんのことは、もういいですから。でも、父ならともかく、私は無名の存在ですよ。格闘大会も一回戦敗退ですし、私に勝っても何の自慢にもなりませんが」

「ふふふ。大会と言えば、その後どうなったでしょうね。ちょっと様子を見てみましょうか」


 シェルシェが、手元のリモコンを操作すると、壁の一部に埋め込まれている大型液晶テレビが点いた。


「プランチャさんが順当に勝ち進んでいる様ですね。ちょうど彼女の試合が始まる所です」


 画面には、試合開始の合図を待つ、プランチャ・バジャとその対戦相手が映っていた。


「相手は、フオリ・モルデノ。これも打撃系の人です。プランチャさんより、少し背が高くて体格もいいですね。いい試合になりそうです」


 試合開始のブザーと共に、両者は中央に進み出た。軽い足取りでプランチャはフオリの周囲を回り、フオリはプランチャの動きを追って向きを変えながら、時折相手の懐に飛び込んで、軽い突きを繰り出している。


 と、プランチャの動きが止まり、二人は接近した状態のまま、激しく互いの体を打ち始めた。

 両者ともその場をほとんど動かず、拳による近距離の打ち合いだけが延々と続く。


「お互いに一歩も退きません。まさに意地の張り合いです。首から上を打てないのが、もどかしいでしょうね。アリッサさん、どちらが勝つと思います?」

 シェルシェが聞いた。

「正直分かりません。ただ、私なら、ああなる前に逃げます。すごく痛そうです」

 アリッサは打撃の痛さを想像しながら、少し顔をしかめて答える。

「私には、プランチャさんが優勢に見えます」


 突然フオリの動きが止まり、そのままがくりと両膝を地に着けた。続いて両肘、さらには体全体がひしゃげるように倒れる。


 審判がプランチャの勝利を告げ、試合は終了した。


「もう立てませんね。プランチャさんは、有利な態勢を捨ててまで打ち合いに持ち込んでましたから、勝てると確信していたのでしょう」

 シェルシェが微笑む。

「私は逃げ続けていて正解でした。ほら、相手の選手が担架で運ばれてます。下手すれば、私もああなってました」

 アリッサはうんざりした様に言った。

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