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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第一章◆◆ 託児所の平和を守る者
5/104

◆4◆

 しばらくして、表で声がした。

「ごめんください。誰かいませんか?」

 その声を聞きつけたレットは立ち上がり、のっしのっしと玄関の方へ出向く。

 戸を開けると、そこには十五、六歳くらいの、使い込んだデイパックを背負った少年が立っていた。

「すまんが、今、道場主は門下生と走りこみに出ている。私は道場主の知人、レット・ブリストルだ。何か用か?」

「僕はノルド・オスティンと言います。旅先のヴォーン・スルーさんから遣いを頼まれました。アリッサ・スルーさんは、いつ頃戻られますか?」

「もう戻ってくる頃だと思うが。ヴォーンが一体何を?」

「アリッサさんに、これを渡すようにと」

 ノルドは背負っていたデイパックから、古びた懐中時計を取り出した。レットはそれを見て、

「ヴォーンが愛用していた時計だな」

「新しいのを買ったので、これは娘に譲る、とのことでした」

「わざわざ君に届けさせたのか?」

「旅費は十分に頂いたので問題ありません。『娘に時計を直接渡して、その時の様子を後で詳しく教えて欲しい』と頼まれました」

「相変わらず、奴の考えていることはさっぱり分からん。ああ、アリッサが戻って来たようだ」


「はい、走った後は、みんな足腰をとんとん叩いてね。叩かないと後で痛くなるから。あら、お客さん?」

 走り込みを終えたアリッサは、見慣れない少年に問いかけた。

「初めまして。ノルド・オスティンと言います。ヴォーンさんから、この時計を渡すように頼まれました」

「父から? わざわざ遠い所をどうもすみません。まあ、玄関で立ち話も何ですから、どうぞ中へ。あ、レットさん。悪いんですが、子供達に冷蔵庫の麦茶を出しておいてもらえますか? 先にこの人の用件を済ませておきたいので」

「ああ、やっておく」

 レットがのっしのっしと台所へ向かう。

「いえ、どうかおかまいなく、僕はすぐ帰ります。稽古のお邪魔をしては悪いですから」

「ああ、いいんですよ。あの人が子供達を見ててくれますから。昔、ここの門下生だった縁で、こうして色々手伝ってもらってるんです。さ、こちらへ。あ、靴はここで脱いで下さいね」

 アリッサは居間にノルドを案内して、ちゃぶ台を用意した。

「はい、座布団どうぞ。こんな山奥まで来るのはさぞ骨折りだったでしょう」

「いえ、こういう所を旅するのは好きですから、苦になりません。ヴォーンさんの遣いを引き受けたのも、半分は自分の為のようなものです」

「父はどんな様子でした? ご迷惑をかけていなければいいんですが」

「旅を満喫されてます。三週間前にカリョーの町の宿屋で知り合いました。その時ヴォーンさんは、観光案内を楽しそうに眺めてました」

「やはり武者修行は口実で遊び呆けてるのか。我が父ながら呆れたもんだわ」

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