表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ 木刀と金属パイプと私

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/104

◆12◆

「僕は子供の頃、ヴォーンの道場に預けられていました。その辺の事情を説明すると長くなりますが、要は、僕の父が、息子に武芸で身を立てさせようとしたのです」


 リーガは話を続けた。


「まだ子供だったアリッサと僕は、道場で暇を持て余していた大勢の武芸者から、遊び半分に、色々な流派の技を無秩序に教え込まれました。ただ、ヴォーン本人からは何も教わっていません」

「父は、娘の私にさえ稽古をつけませんでしたから。だから、私がヴォーンの技を受け継いだ、などと言うのは全くのデマです」

「そんなヴォーンですが、武芸と関係ないことには、やたらと熱心でした。道場の改造計画とか水力発電機の設計とか、門下生と一緒になって夢中になって作業をしていました」

「怠け者って、本業以外のことはやたら張り切るのよね」

「なぜ、そこで僕を凝視してるんだい、アリッサ」

「別に。ただあんたの方が、父の性格を継承しているなあって思って」


 二人のやりとりに、シェルシェが微笑む。


「なるほど、事情は分かりました。お二人は、小さい頃から武芸の英才教育を受けていたのですね」

「ただし、全く系統立っていない、継ぎはぎの教育ですが」

「リーガの言う通りです。特に私の技量なんてたかが知れてます。何度か試合をやれば、色々とボロが出ますよ」

「そう、ただ小さい頃から、色々な武芸者と直に接して来たので、一通りあしらう方法を少し知っているだけです。そうこうしている内に、また数年が過ぎて、世の中が平和になるにつれ、道場にいた門下生も一人減り、二人減り、と言った具合で、父も息子の将来を思い直したんでしょう、武芸者でなく堅気にしようと、僕を故郷に連れ戻しました。今僕は、翻訳の下請けの仕事をしています」

「リーガが道場からいなくなってしばらくすると、門下生はとうとう一人もいなくなりました。母はそれより少し前に病気で亡くなっていたので、道場は父と私の二人だけです。そして一年前、父が私に道場を押し付けて、自由気ままな旅に出てしまい、私は色々と考えて、子供相手の道場をやることにしたんです」


 アリッサはそこで一旦言葉を切り、強調するように、


「そんな訳で、リーガも私も武芸者とは言えないんです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ