表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ 木刀と金属パイプと私

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/104

◆8◆

「アリッサさん、リーガさん。よろしければ、この後、お時間を頂けませんか? 少しお話したいことがあるのですが」


 シェルシェの言葉に、アリッサはちょっとの間を置いて、

「試合をしなくていい、と言うのであれば」

 と、慎重に返答した。


「ふふふ、大丈夫です。そんなに警戒しないでください。お二人共、着替えが済みましたら、どうぞ正面玄関まで来てください。車を待たせてあります」

 

 三十分後、アリッサ、リーガ、シェルシェ、ヴォルフの四人は、本部道場から少し離れた所にある、小規模な支部道場までやって来た。小規模とは言っても、三階建ての真新しいビルではあったが。


「今日、この支部道場は臨時に貸し切りにしてあります。どうぞこちらへ」

 シェルシェは、アリッサとリーガに中へ入るよう促した。

「念の為伺いますが、もう試合はしなくていいんですよね?」

 アリッサが入口の手前で、少し不安そうに聞いた。

「お望みなら一戦」

「いえ、望みません、結構です」

「ふふふ、冗談です。どうぞこちらへ」


 応接室に通され、アリッサとリーガは、マントノン家の二人と向かい合ってソファーに座った。 


 シェルシェは真面目な顔になって、

「まずは、先日の三女パティの無礼な振る舞いについてお詫びします。アリッサさん、本当に申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げた。隣のヴォルフ少年も一緒に頭を下げる。

「いえ、それはもう、妹さんとも話はついていますから。どうか気にしないでください」

 アリッサは、あわててそれを制した。


「お気遣いに感謝します。さて、ここからが本題ですが」

 顔を上げたシェルシェは、また笑顔に戻り、

「今や、『ヴォーンの娘』という肩書は、武芸者にとって大いに価値があるのです」

「それ、肩書と言うより、ただの血縁関係なんですが」

「『マントノン家三姉妹』と同じですね。でも世間にとって、それは一つの分かり易い肩書です。道場経営者としても、『マントノン家三姉妹』と言う肩書は、宣伝材料の一つと割り切って考えているのです」

「『マントノン家三姉妹』と言えば、名家のご令嬢で、美人で、しかも剣の達人。道場のイメージアップにはうってつけですが、私はと言えば、山奥の片田舎の託児所のお姉さんに過ぎません」

「むしろその俗世から離れた位置にいることが、アリッサさんの武芸者としての評価を高める要素なんですよ」

「別にそういう効果を狙って、わざと山奥に住んでる訳じゃありません。早い話が、おとぎ話に出て来る田舎のネズミです。都会より田舎の方が、性に合ってるだけで」

「嫌でも俗世と関わらざるを得ない人間からすれば、名声や金銭に執着のない武芸者は、確かにおとぎ話の住人かもしれませんね」

「私は武芸者じゃありません、一応、託児所の経営を通して俗世にも関わってます」

「『マントノン家三姉妹』の内、二人にまで勝ったあなたが、『自分は武芸者ではない』と言っても、もう誰も納得しませんよ」

「どちらの場合も、不意打ちみたいなものですし。武芸者がうっかり毒蛇に咬まれて倒れても、その毒蛇は武芸者じゃないでしょう」

「毒蛇ですか、強そうですね」

「ウチの村では簡単に捕まえる子供もいますよ。危ないからやめなさいと言ってるんですが」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ