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「ミノン、もう気は済んだかしら? この試合は、アリッサさんに無理を言ってお願いしたものです。ここまで、ということにしなさい」
大の字に倒れたまま放心状態のミノンに、シェルシェが近寄って声をかけた。
「あああっ!」
ミノンは雄叫びを上げて、がばと跳ね起きる。
「正直、もう一度戦いたい……しかし、参りました。アリッサさん」
「私だって、一歩間違えば、この手が潰されていたかもしれません」
アリッサはにっこりと笑って、右手をミノンに差し出した。
「ははは、パティと言い私と言い、まだまだ未熟者だ。今日は本当にありがとうございました」
ミノンは、その手をしっかりと握り返す。
「では、試合はこれまでとします。皆さんは、引き続き稽古を続けてください」
シェルシェは二人の握手を見届けてから、門下生達に向かって申し渡した。
「シェルシェは、アリッサさんと試合をしないのか?」
ミノンの無邪気な問いに、シェルシェは微笑んで、
「これは、あくまでもあなたとの試合ですからね。もっともアリッサさんが、私との試合も受けてくださると言うのであれば、話は別ですが」
そう言ってシェルシェは、アリッサの方を意味ありげにちらと見る。
アリッサは、シェルシェの最後の言葉を聞かなかった振りをして、逃げるようにリーガの方へ歩み去った。
「清々しい程、何の役にも立ってなかったわね、リーガ」
わざとらしい笑みを浮かべて、アリッサが言う。
「良かったじゃないか。僕がアリッサの役に立つような、深刻な事態にならなくて」
リーガも爽やかな笑みを浮かべて、それを受け流した。




