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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ 木刀と金属パイプと私

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32/104

◆1◆

 話は第一回戦の直後に戻る。


「いい試合でした。アリッサさん」


 アリッサが試合を終えて控室に戻ると、そこには微笑をたたえたシェルシェ・マントノンが待ち構えていた。

 その表情はあくまでも甘いが、その実、内心には凄烈さを秘めている。


 借金の取立て人って、こんな感じだろうか。アリッサは、そんなことをふと思った。


「恥ずかしながら、手も足も出ずに負けました。言っておきますが、全力で戦いましたよ」

「分かってます。真剣勝負では無く、ルールに則った試合では、さぞやりにくかったことでしょう」

「それは相手も同じことです。それにプランチャさんは、付け入る隙がありませんでした」

「プランチャさんは、このまま優勝してもおかしくありませんね。もしすぐに敗退するようなら、彼女もご招待したかったのですが」

「で、そちらへはいつ伺ったら良いのでしょう?」


 そう尋ねるアリッサの表情には、できれば遠慮したい気持ちが露骨に出ている。


「もう車を待たせてあります。アリッサさんは、そのままいらしてください」

「まさか、このまますぐに妹さんと試合させる気じゃないでしょうね」

「そのまさか、です」

 シェルシェは微笑をたたえたまま言った。

「私を潰すつもりですか?」

「プランチャさんは、まだこの後も続けて試合ですよ?」

 アリッサは、はぁ、とため息をついた。

「あなたに何を言っても無駄なような気がしてきました。伺いましょう。妹さんに直談判します」

「ミノンはもう駐車場で待っていますよ。話はどうぞ車中で」


 アリッサはシェルシェの後について、会場地下の駐車場まで来た。大型車両用スペースに、車体が不自然に長く、それでも高級感の漂う黒塗りの車が停めてある。


 誰がどう見てもカタギの乗る車ではない。


 その車の脇に、濃紺色を基調とする稽古着を着た、輝く小麦色の短髪の、パティやシェルシェとよく似た顔立ちをした、堂々とした長身の女性が立っていた。

 

「初めまして、ミノン・マントノンです。本日はお疲れの所、私との試合の申し出を受けて頂き、感謝の念に堪えません」


 しなやかなバネのような三女、物腰は柔らかいが芯の強そうな長女、そして今、目の前にいるがっしりとした体つきの次女。マントノン三姉妹は顔が似ていても、それぞれの個性は全く違うようだ。


「初めまして、アリッサ・スルーです。試合直後に続けての試合は、流石に遠慮したいのですが……」

「無理は承知のお願いです。何とならば、今ここで勝負したいとさえ思っています」

「他の利用客の迷惑になりますから、やめてください」

「あっはっは、残念です。では迷惑のかからない場所までご案内しましょう」 


 借金が払えずそのスジの人達に事務所へ連行されて行く一般市民、そんなギャング映画の一場面を、アリッサは思い出していた。

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