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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第二章◆◆ 全国格闘大会へ(逃げる)
31/104

◆12◆

 アリッサは、記者団に対して次のようなことを答えた。


「プランチャさんは強敵でした」

「打撃系の人には、『首から上への攻撃禁止』のルールは不利になったと思います。それが逆に、こちらが逃げるのに有利になりました」

「逃げ回りつつ、隙をついてのカウンターを狙っていたのですが、彼女は一流の拳闘家だけあって、簡単には許してくれませんでした」

「元々、ウチの流儀は『戦うこと』より『逃げること』に重きを置いてますし、私は正式には武芸者とは呼べません。道場をやっていると言っても、ほとんど託児所みたいなものです」

「武芸者としての父の名が大げさに広まっていて、娘である私を過大評価する人もいるようですが、結果はごらんの通りです。手も足も出ませんでした」

「もうこれを期に、こういった大会とはあまり関わらないようにするつもりです。今まで通り、山で呑気に暮らすのが性に合っています」


 一方、試合に勝ったプランチャは、その後も順調に勝ち進んで優勝してしまった。

 その時、もうアリッサは会場におらず、帰途についていたのだが。


 優勝後、プランチャはアリッサについて、記者団に対し次のように語った。


「今大会で一番の強敵は、最初に当たったアリッサさんです」

「最初に足を取られた時は、場外ルールに助けられました。もしルールが無ければ、確実に足首を粉砕されていたでしょう」

「攻めても無駄だと分かっていながら、ポイントを稼ぐ為に攻め続けました。攻めている間は、いつ反撃されてノックアウトされてもおかしくない状況でした」

「『首から上への攻撃禁止』ルールが無かったら、どんな技が私にかけられていたかは、想像がつきません。とにかく首から上は攻撃されない、ということに頼って、やっと攻め続けられたようなものです」

「アリッサさんは、あまり動いていないように見えたかもしれませんが、実は非常に巧みに動いています。タイミングを微妙に外されている、そんな感じでした」

「『勇者』ヴォーンの伝説を一身に受け継いだ格闘界のマジカル最終兵器、と称されるアリッサさんと試合が出来たことを、光栄に思っています」


 後日、この発言をテレビで見たアリッサは、自分の努力が粉々に打ち砕かれたことを悟り、ちゃぶ台に突っ伏した。


「プランチャさん、あんたって人は……いや、悪気が無いのは分かってるんだけど。マジカルって何?」


 アリッサの称号が、本人の意思に反して、また一つ進化した。


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