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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第二章◆◆ 全国格闘大会へ(逃げる)

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30/104

◆11◆

 フェロン大統領は特別席から、アリッサとプランチャの試合の一部始終を観戦していた。


「あれは間違いなくヴォーンの娘だな。とにかく、面倒なことから逃げて逃げて逃げまくる、まるでヴォーンの生き方そのものだ。しかし」

 フェロン大統領は、口に手を当てて考え込む。

「何でしょう?」

 隣に座っている秘書のクララが、大統領に聞いた。


「なぜそんな面倒くさがりが、わざわざこんな大規模な大会に出る気になったのだろう?」


 その真相を知ったら、呆れ果てたことは間違いない。


「失礼します、大統領閣下、例の件について、内密にご報告したいのですが」

 背後から声がした。フェロン大統領とクララが振り返ると、二十歳くらいの運営スタッフの青年が、一枚の紙を持って立っている。

「ああ、構わんよ。それが例の工事の見積もりかね?」

「はい」

 青年は、持っていた紙を、大統領に手渡した。

「試合を観戦しながら、目を通させてもらうよ」

「よろしくお願いします。あの」

「何だね?」

「これは個人的なお願いで、恐縮ですが、手帳に大統領の直筆サインをもらえますか?」

 青年は黒い手帳を取り出して開き、ペンと一緒に大統領に差し出した。

「構わんよ。どれ」

 大統領は手帳とペンを受け取り、サインを書いてから返した。

「ありがとうございます。家族に自慢できます」

 喜々として、青年は去っていった。


「私を通さないと言うことは、あまり素性のよろしくない件ですか?」

 クララが尋ねた。

「まあ、そういうことだ。ここの会場の管理責任者が古い友人でね。老朽化に伴う改修工事の予算の便宜を図ってくれ、と頼まれていたのだ。正規の手続きだと、色々と面倒らしい」

「そうですか。私は何も見なかったことにします。この件が発覚しても、『秘書が勝手にやったことだ』などという、見苦しい言い訳は使わないでくださいね」

「発覚前提かね。まあ、小さな不正だが、二十年前と違って、こんな些細なことでも、マスコミに叩かれかねない時代だからな」

 大統領は手渡された紙を一瞥してから、上着の内ポケットにしまいこみ、軽くため息をついた。

「それと、スタッフの一人に個人的にサインをする位は、大目に見てくれ」

「一人にサインを許して、別のスタッフ達が、我も我もと、サインを求めてやって来なければいいのですが」

「あんな風にかね」


 大統領の視線の先では、試合を終えたアリッサが、会場の隅で二十人程の記者に囲まれていた。

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