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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第二章◆◆ 全国格闘大会へ(逃げる)

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29/104

◆10◆

 審判の指示に従い、アリッサは、プランチャの右足首を離して元の位置に戻る。

 プランチャもすぐに起き上がり、自陣まで戻った。右足首にダメージは無い模様だ。


 試合が再開されると、プランチャは、今度はまっすぐアリッサの元へ走り寄り、真正面から拳を次々と繰り出した。  

 アリッサは、横へ横へと、すべるように退避し、そのままプランチャに背中を向けて走り去る。プランチャもその後を追う。枠線の端まで来て止まったアリッサの背後に、右の拳を繰り出そうとする。


 その拳が伸びきる前に、アリッサの左後蹴りが、プランチャのボディにめりこんでいた。


 だが、プランチャは怯まず、アリッサの背面に左の拳で攻撃した。アリッサは、場外に逃げてこれをかわす。


「場外!」


 特に技がかかっていない場合、自分から場外にわざと出るのも、減点の対象になる。審判からアリッサは、再び警告を受けた。


 試合再開後、相変わらず、アリッサは自陣から動こうとしない。

 プランチャは、ギリギリの位置まで近づき、決して当たることのない距離から、拳を時々繰り出して、様子を窺っている。


 不意にプランチャが高く跳び上がり、右足の蹴りが、空中に弧を描くようにアリッサの肩を狙う。

 アリッサは地を這うようにして、プランチャの下をくぐり抜け、さらにそのまま逃げた。


 それからはずっと、プランチャが追いアリッサが逃げる、という展開のまま試合が進み、やがて終了のブザーが鳴った。


「勝者、プランチャ・バジャ」


 審判がプランチャの判定勝ちを宣言した。


 フルマラソンを完走した後のランナーのように、全身汗だくで肩で息をしているプランチャと、井戸端会議から戻って来た主婦のように、疲労した様子がまるで見られないアリッサとが、再び試合領域の中心部で一礼の後、握手を交わした。


「負けました。付け入る隙が見つからなかったわ」


 アリッサは、そう言ってプランチャに笑顔を見せる。


「何をおっしゃいますか……ルールが無ければ……私はここに立ってられなかったと……思います……いい勉強をさせてもらいました」


 プランチャは息を切らしながら、汗だくの手でアリッサの手をしっかりと握りしめた。


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