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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第二章◆◆ 全国格闘大会へ(逃げる)
22/104

◆3◆

「レットさんも、格闘大会の男子の部に出たらどうです。それこそ、優勝を狙えるのでは?」

「私は、スポーツ化した武芸は、あまり好かない」

 レットは気乗りしない様子で、アリッサに答えた。

「そうですか。でも、大会の要項をプリントアウトした紙が、居間に置いてあるので、興味があったら読んでみてください」

「一応、目は通しておく」

「では、そろそろ子供達が来る頃なので、私は稽古場に行きます」

 アリッサは稽古場へと向かい、その後からレットは道場に上がり込み、のっしのっしと居間の方へ歩いて行った。

 

 アリッサの言った通り、居間のちゃぶ台の上に、新しく印刷されたばかりの書類が数枚置いてあった。レットは座り込み、それらを手に取って熱心に目を通す。

「試合領域は二十メートル四方か。やや広めだな。首から上への攻撃は禁止で、背面への攻撃は許可されているのか。ふむ」

 レットは、何かぶつぶつとつぶやきながら、大会の要項を見ていたが、不意に立ち上がり、


「こう突きを繰り出して、相手がこう払う、そこで下段からこう、相手がこう来て、こちらがこうだから……」


 何も無い空間に向かって、突きや蹴りを繰り出し、終には見えない敵と戦い始めた。

 その姿は、民家に侵入した熊が、不思議な踊りを踊っているようにも見えた。

 熊はしばらくの間、様々な試行錯誤を繰り返していたが、


「いや、待て。顔面への攻撃が禁止されている訳だから、ここのガードは必要ない、ならば、これは……うむ、いける!」


 レットは居間を出て、のっしのっしと稽古場へ向かった。


「アリッサ、新しい技を思いついたんだが、ちょっと組手の相手をしてくれないか?」


 稽古場に着くなり、レットは興奮した様子で中に声をかける。そこには、すでにたくさんの子供達が来ていた。


「あの、レットさん? 今、子供達の稽古の最中なんですが」


 指導をしていたアリッサが、困惑した面持ちで言う。


「あ、すまん。続けてくれ」


 レットは少し赤くなり、子供達のどっと笑う声を背に聞きながら、のっしのっしと稽古場を後にした。


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