表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第二章◆◆ 全国格闘大会へ(逃げる)
20/104

◆1◆

 マントノン家の三女パティが去った後、アリッサの道場には、何事も無かったかのように、いつもの日常が戻って来る。


 はずだったが、数日も経たない内に、パティとの一戦は広く世間に知れ渡っており、日用品の買い物に山を下りたアリッサは、村人から色々と質問攻めに遭っていた。


「一体、誰がばらしたんだろう?」


 ノルド君だろうか。一番可能性があるのは彼だ。口止めしておいたものの、村の噂好きのおばちゃんに捕まって、誘導尋問を受けたら、ひとたまりもない。現に自分もひとたまりもなかったし。

 もしくはパティ本人か。しかしマントノン家の不名誉になることを、自分から世間に言いふらすとも思えない。

 または、誰か他に目撃者がいたのか。あり得ないことではないが、心当たりがない。


 とにかく、「パティがマントノンの家名を背負って、『勇者』ヴォーンの娘にナイフコンバットを挑み、逆に素手で叩きのめされた」、という事件は、もう広く知れ渡っている。


「まさか、私が自分から言いふらした、と思われてないでしょうね。マントノン家から、苦情が来なきゃいいんだけど」


 人里離れた山の中にある、この平和な道場に、マントノンの門下生達が押しかけて来たら、どうしよう。

「考えるだけでも面倒くさいわ。子供たちにも迷惑がかかるし」


 それに、子供を預かる商売をしている以上、過度に恐怖感を与えては、マイナスイメージになる。

 「勇者」ヴォーンの娘と言うこともあり、親御さん達は、

「アリッサさんは普段はやさしいけれど、本当は怖い人なんだ。だからよく言うことを聞くんだぞ」

 と、子供達を脅しているが、アリッサが実際に、子供達に手厳しくしたことはない。

 ヌルさが売りだし。道場とは名ばかりの託児所だし。


 だが今や、道場破りを半殺しにした、という物騒な事件が発覚してしまった。


「もう道場に通うのやめる、とか言い出す子供が出るかも」


 例の株売却で得た資産が残っているから、別に託児所をやめても生きてはいけるが、「託児所のお姉さん」から「無職浪人女」へのジョブチェンジは、何か嫌だ。

 やはり、父がひたすら戦いを避けているのは、正しい選択だったのか。でもそのツケが、娘に全部回って来る仕組になっているのは、いかがなものか。


 買い物から戻ったアリッサは、居間でちゃぶ台の前に座り、ため息をつきつつ、テレビを点けてみる。ちょうどニュースの時間だったが、流石にこんなローカルな事件は、テレビでは取り上げていない。


 だが、アリッサの関心を引くニュースが一つ、報道されていた。


「……諸流派を統一ルールの下にまとめた、新しい格闘技を開発していこうというプロジェクトの一環として、首都で格闘大会が催されることが決定しました。現在出場希望者を募集しており、すでに各流派から多数の参加表明がなされています」


「これだ」

 思わずアリッサは膝を打った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ