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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第一章◆◆ 託児所の平和を守る者
17/104

◆16◆

 稽古場の真ん中で、アリッサは不機嫌そうに口をへの字に曲げ、腕組みをして立っていた。

「できれば、そのナイフは使わないでもらえませんかね。稽古場に余計なキズをつけたくないので」

「できれば、余計な抵抗はやめてくれないかしら。私もあなたのお肌に余計なキズをつけたくないの」


 パティは体勢をやや低くしてナイフを前方に構え、少しずつ間合いを詰めて来た。

 アリッサは後方へ一歩下がる。


「着ているものを、一枚ずつ、切り刻んであげる」

 パティの息が、興奮で荒くなってきた。

「マントノン家の三女ともあろう人が、こんな変態だとはねえ」

 そう言って、アリッサはまた一歩下がる。


「まずはその可愛い足を露わにしてあげる」

 パティは、じりじりとアリッサを稽古場の端に追い詰めて行く。

 アリッサは、一歩また一歩と後退し、もう一歩で壁に到達する所まで来た。


「バカな真似はやめませんか。今やめれば、私は何もなかったことにしますけど」

「追い詰められた状況で、顔色一つ変えないのは、流石ヴォーンの娘ね」

「やめないんですね」


 アリッサがさらに一歩下がる。と、そのまま背後の壁を、後向きに駆け上がった。まるで足が壁に張り付いているかのように。


 パティの表情に驚きと緊張が走る。反射的にナイフの位置を上げ、防御の体勢をとる。

 アリッサはそのまま壁を上り切ると、さらに後向きのまま天井を走って、パティの頭上を通り過ぎて行った。

 パティは信じられないと言った顔で、それでも体の向きを反転させて攻撃に備えようとする。


 その反転の動きが終らぬ内に、アリッサは天井を蹴って急降下し、パティに飛びかかって、床に組伏せた。パティのナイフを持つ右腕をつかみ、一度上へ持ち上げてから、肘の内側の部分を床に思いっきり叩きつける。

「ひっ!」

 激痛に思わず悲鳴を上げるパティ。ナイフは鈍い音を立てて、床に転がった。


「もうバカな真似はしないと約束してくれますか?」

 アリッサは背後から、パティの両の手首をそれぞれつかんで腕を持ち上げ、波乗り固めの形に極めた。


「痛っ……いいじゃない裸になってくれるくらい! 写真はヴォーンに見せた後、個人で楽しむだけにして、ネットに流したりしないから!」

「流されてたまるかっ!」

 アリッサは、パティの背後で固定している両腕の間隔を、少し狭めた。

「痛っ、痛っ!」

「もう一度聞きます。もうバカな真似はしない、と約束してくれますね?」

「ええい、折るなら折れ! 武芸者たる者、その位の覚悟は出来ている!」

「ああもう、変態かと思えば、変な所でプライド高いわ、この人」

 アリッサはため息をついた。

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