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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第一章◆◆ 託児所の平和を守る者

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14/104

◆13◆

 翌朝、今度こそ本当にノルドは道場から去って行った。


「では、アリッサさん、これで失礼します。色々ご迷惑をおかけして、すみませんでした」

「気にしないで。元はと言えば、ウチの父が悪いんだから。遠い所までどうもご苦労様でした。気を付けてね」


 山道を歩きながら、ノルドは今回の件について色々と反省した。

 武芸者のはしくれを自認していたのに、自分の身長の半分もない子供達に、手も足も出なかったこと。

 自信満々に道場を出て行ったはいいが、いきなり道に迷い、すごすごと道場に戻って来たあげく、一晩泊めてもらったこと。

 思い出すだけで自分が情けなく、恥ずかしさの余り、歩きながら身悶えしてしまうノルド。


 ちょうど身をよじって悶えている時、間の悪いことに、向こうから女の人が歩いて来るのが見えた。


 あわてて平静を装い、何事も無かったかのように通り過ぎようとした時、女がノルドを呼び止める。

「あなたは道場の人?」

「い、いえ、違います。僕はアリッサさんに用事があって、今はその帰りです」

 女は二十歳くらいだろうか、ノルドより頭一つ分背が高い。光沢のある小麦色の髪を後で束ね、薄く化粧が施されたその細面の美貌は、こんな山奥には似つかわしく思えなかった。暑い地方から来たのだろうか、やや露出度の高い服を着ている。

 つい目をそらしてしまうノルドを見て、女の口元は微かに笑った。

「アリッサさんは今、道場にいらっしゃる?」

「はい、行けば会えると思います」

「そう、ありがとう」

 女は、ノルドが目をそらした方向に、わざと肢体を見せつけるように回り込んでから、道場の方へ歩いて行った。

 ノルドは少し顔を赤くして、その場から早歩きで去ろうとしたが、ふと立ち止まり、振り向いて、女の後姿を見た。女は大きめのベルトポーチを腰に下げていたが、よく見ると、何かの柄が横に飛び出している。

「戦闘用ナイフだ。あの女の人も武芸者なのか?」

 ノルドは波乱の予感がした。武芸者と武芸者が道場で相対すれば、いざ尋常に勝負、という展開もあり得る。だとしたら、自分も武芸者のはしくれとして、その試合は是非見届けたい。


「でも、今道場に戻ったら、『お前、また道に迷ったのか』と思われそうで嫌だ」


 どうしようかと迷っている内に、女の姿はノルドの視界から消えていた。


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