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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第一章◆◆ 託児所の平和を守る者
13/104

◆12◆

「まあ、無理に下山せず、灯りを頼りに戻って来たのは賢明よ。遭難したら命に関わるからね、本当に。今日はウチに泊っていきなさいな」

 アリッサは、意気消沈したノルドを励ますように、声をかけた。

「ご迷惑をおかけして、本当にすみません。悪い噂が立たなければいいのですが」

「悪い噂? あはは、子供が気を回しすぎ。村の人は誰も、私が、見境なく男を道場に引っ張り込むような女とは、思ってないから」

 そう言ってから、アリッサはあわてて手を口に当てて、

「おっと、下品な言い方してごめんね」

「いいえ。でも、アリッサさんは、人の子供を預かる仕事だけあって、信用されてるんですね」

「もっとも、別の方面では、言いたい放題言われてるけれどね。『格闘マシーン』とか『熊殺し』とか」

「年頃の女の子に付けるあだ名じゃありません、それ」

「武芸者の娘ってだけでこの扱いよ。村では子供が言うこと聞かない時、親御さんが『わがまま言うと、アリッサさんにおしおきしてもらうよ』と脅すそうよ」

「するんですか」

「いや、本当にやったら、私が親御さんにお仕置きされるから。ま、それはいいとして。ちょうどご飯食べてた所だから、ノルド君も一緒にどうぞ」


 その後、アリッサと夕飯を共にして空腹が満たされると、ノルドも元気を取り戻した。

 食後のお茶を飲みながら、話題は旅先でのヴォーンの事になり、

「そんな感じで、ヴォーンさんは、喜々としてあちこちを見物していました」

「修行はどうしたのかしらねえ。娘をほっぱらかしておいて、まあ」

「やはり、道場にいてもらった方がいいですか」

「どっちでもいいわ。いても何もしないだろうし。道場主に向いてないことは、自分でも分かっていたのね。現にこうして、私に道場を丸投げしてる位だし」

「優れた武芸者が、必ずしも優れた指導者にはならない、とはよく言われますが」

「優れた武芸者ってのも、あれね。内戦時代の行いに、尾ひれがついて伝説化しちゃった感があるから。巷で流布されてる武勇伝を、一つ一つ検証すると、伝説が崩壊して何も残らないわよ、ウチの父」

「でも、武芸者として一流だということは、確かでしょう」

「うーん、一流ねえ。何の一流かによるわね。そもそも、いくら鍛えても、銃で撃たれたら終わりだし」

「それは、話が極端すぎます」

「父も私も、武芸にロマンなんか求めていないことでは、意見は一致してるの。あくまで技術だと。一流の人達は、武芸を通じて、より高い精神性を追求していく所があるけど、ウチにはそれがない」

 そう言って、アリッサはお茶を一口飲む。

「身に迫る危険から、全力で逃げて逃げて逃げまくる。それがウチの基本方針よ。分かりやすいけれど、精神性としてはかなり低レベルよね」

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