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アリッサは、ちゃぶ台の上に置かれた懐中時計を、再び手に取った。
「あの面倒くさがりの父が、何でわざわざこんなものを寄こしたのかしら。妙な話よね」
「アリッサさんに、心当たりはないんですか」
「まったく。見当がつかないわ」
アリッサは、懐中時計のふたを開けて、文字盤をじっと見た。
「では、用事も済んだので、僕はこれで」
ノルドがそう言って立ち上がる。
「あ、別に『もう帰れ』って意味で、時計を見てた訳じゃないから。でも、あまり遅くなってもよくないわね。夜の山道は危ないし」
「大丈夫です。今日は色々とありがとうございました」
「こちらこそ。また、父のいる町へ戻るの?」
「はい、何か伝言があれば、お伝えしますが」
「じゃあ、悪いけど、『何かする時は、ちゃんと説明しなさい』、と言っておいてくれる?」
「はい。そのまま伝えます」
ノルドは笑って道場から去って行った。




