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逃げ足道場 ~私を面倒事に巻き込まないでください~  作者: 真宵 駆
◆◆第五章◆◆ 時計じかけの黒歴史
101/104

◆26◆

「旧友と個人的な話をしている時位、監視するのはやめて欲しいのだが」


 通話を終えたフェロン大統領は、頑として執務室から出て行こうとしなかった秘書のクララに向かって、苦情を申し立てた。


「人に監視を付けるのは平気でも、自分が監視されるのは嫌、などと言うのは身勝手が過ぎませんか、大統領閣下?」


 クララがタブレット端末を操作しながら、フェロン大統領の方を見向きもせずに答える。


「君の為を思って言っているのだ。私の個人的な情報を知ってしまった事で、君が面倒事に巻き込まれる可能性だってある」


「それでも、閣下が任期の途中で不慮の死を遂げた場合の面倒事に比べれば、大したものではありません」


「私は当分自殺などするつもりはない。今は、一分一秒でも長生きしたい気分だ」


「そう言って周囲を油断させておいて、不意に旅立ってしまう人は結構多いのです、大統領閣下」


「じゃあ逆に、『今すぐ死んでやる』とでも言い続ければ、監視を解いてくれるのかね」


「一般にそう言う人程死なないと言われてますが、実際問題として、予告を実行する人も多いと聞きます」


 フェロン大統領はため息をついて、


「『表が出れば僕の勝ち、裏が出れば君の負け』か。結局、君はただ、上司への日頃の不満を、ここぞとばかりに解消したいだけなのだな」


「真面目に職務を遂行している部下に向かって、その様な暴言は慎んでください」


「これはとんだ失礼をした。真面目に職務を遂行している部下に対して、心無い発言をしてしまったことは謝ろう。謝らないと、君の事だ、今度は私に拘束衣を着せかねん」


「それは良いアイデアですね。早速手配をさせましょうか?」


「やめてくれ、税金をそんなくだらない事に使ったのが国民に知れたら、この官邸に石が投げ込まれる。君は逃げられるかも知れないが、拘束衣を着せられて動けない私は、良い的だ」


「私は逃げたりしませんよ、大統領閣下」


「君も一緒に的になってくれるのか?」


「いえ、石を投げる側に回ります」


 フェロン大統領は、少し悲しげに首を振り、


「好きにしたまえ。人に恨まれるのも私の職務の内だ」


 表の職務でも、裏の職務でも。


 言葉には出さず心の中で、そう付け加えた。


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