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07

王女の亡命に協力しないことに決めた私は、王女とその護衛をポート・ディクソン帝国に引き渡すことにした。これは私にとってベストな選択であると同時に王女たちにとっても、もっとも安全な選択であるはずだ。


まず、私にとっては身の破滅を防ぐことができる。また、戦争の早期終結をもたらすこともできるし、王女の引き渡しに対するわずかばかりの報奨金を手にすることができる。もし、王女が亡命を成功させた場合、テブラウ王国とポート・ディクソン帝国の戦争に突入してしまうため、戦争状態が長引いてしまう。国土も荒廃するだろう。商売あがったりだ。


王女にとっても最も良い選択であろう。亡命に失敗した場合、その場で命を落とすかもしれない。仮に亡命に成功しても、ポート・ディクソン帝国との戦争によって命を危険にさらすことになる。さらに、王女自身は「この国を守りたい」と言っていた。現状では王女がポート・ディクソン帝国に投降することがこの国を守るうえでの最善だ。


この選択はポート・ディクソン帝国にとっても望ましいものであるはずだ。戦争を短期間で決着させることができるし、王女を手元に置いておけば、戦後統治も行いやすいはずだ。この国に攻めてきたポート・ディクソン帝国の将軍は今頃冷や汗をかいているに違いない。城に残った王族たちが全員戦死してしまうかもしれないし、自害してしまうかもしれないからだ。そうなれば今後の戦後統治に支障もきたすし、キャリア上の汚点となってしまう。


王女を引き渡すということは、誰にとっても得となる選択だ。


私はこの選択が最善のものであると確信すると、王女とその護衛を睡眠薬で眠らせ、拘束することにした。


次に私が考えるべきは、いかに安全に王女をポート・ディクソン帝国に引き渡すか、という点だ。安全に引き渡すうえでは、ポート・ディクソン軍の幹部としっかりとしたコネクションを築いておかなければならない。


そこで私は、商売人仲間と、官僚時代の先輩・後輩・同期たちに片っ端から電話をかけることにした。誰かしらポート・ディクソン軍の幹部とコネクションを持っている人物がいるはずだ。思った通り、ポート・ディクソン軍の幹部とのコネクションはあっさりと作れた。


私は王都に向かい、その幹部に事情を説明すると、その幹部は丁重に王女とその護衛を保護してくれた。


王女の引き渡しが終わり、家に戻ったころにはすっかりあたりが暗くなっていた。ポストに入っていた夕刊を取り、家の中へと入る。魔法を使い、電気を付ける。コーヒーを新しく一杯淹れ、一口飲むと、ふぅ、と溜息が漏れた。


夕刊を開く。王族全員が城を枕に自害した、との報が目に入ってきた。

戦争は終わった。王女の意思に反して、王女の身柄をポート・ディクソン帝国へ引き渡したことについては若干の後ろめたさは感じるものの、一個人としてはああするより他になかったのだし、無駄な流血を未然に防いだのだから、これで良かったのだ。そう自分に言い聞かせてみる。


さて、戦争は終わったのだから気分を入れ替えて、レストランの再開準備をしよう。




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