第48話
合流を果たしたパーティーメンバー達。
「もう、ここまで来たら、最後まで行こうぜ。何、例え危ない目に遭ったとしても、ワガハイがエクリアだけは守ってやろうではないか」
「ありがとう、蜥蜴丸。守ってくれるのは私だけかな?」
「クカカカ、ワガハイが直斗を守るとでも思っているのかね? 守るのは大目に見ても女性陣だけよ。直斗は血まみれになって働けよ」
「……今、お前に対する殺意が、俺の中で膨れ上がっているよ」
「平和だねえ。シルヴィアが絡んでこないだけで、こんなに平和なんだねえ」
ユーフェミアはシルヴィアに絡まれずに済み、ホッとしている。今彼女は直斗の左腕に己の右腕を絡ませながら歩いている状態だ。直斗は彼女の豊満な腕が当たっているので、役得役得、そう思いながら歩いている。そう、彼は今シルヴィアからユーフェミアを守っているのだ。そうでも思わないと、エクリアの視線が怖いのだ。
「まあ、そんな事はどうでもいいのだ。それで、どうする? 本当に奥に進むのか? あの変態の恋人が言っていたが、最奥には、数字をうちこむ装置があり、間違った数字をうちこむと、恐ろしい魔物が出てくるそうではないか」
「……ビビっているのか?」
からかうような蜥蜴丸の声に怒気をはらんだ声で答えるディアナ。彼女としては、どうするかの提案をした時に、伝えられた真実を言ったに過ぎない。元四天王である。ビビっているなどと思われたらたまったものではない。
「貴様、この私がビビっているとでも思うのか?」
「違うのか?」
「ふん、この私がビビっているとでもナオトにまで思われたらたまったものではない。おい、ナオト、奥へ進むぞ。どんな魔物が来ても、どうという事はない。それに、本当に危なくなったら、お前が守ってくれるんだろう?」
微笑みかけるディアナに、直斗は苦笑しながら答える。
「任せとけ」
「左腕に女ぶら下げながら他の女に答えるセリフではないと思うぞ、誠意がないなんて思われるかもしれんな」
「うるさいぞ、蜥蜴丸。お前がチャチャ入れなければ、バッチリ決まっていたのに……」
「ナオト君は、私をシルヴィアから守っていればいいの!!」
「古代遺跡攻略中だというのに、平和だねえ」
「にゃあう」
相変わらずのパーティーメンバーを苦笑しながら、エクリアとコリスが見つめていた。
「いいですか、ゲーサン。これからは、コリスちゃんだけでなく、一般受けもする風景画や、人物画を描いていきましょう。似顔絵なんて描くと、受けがいいかもしれません」
「げげ? げっげげ?」
「王都の広場で似顔絵を描く商売をするのもいいかもしれませんね。こんな商売をしている人間はまずいません。それを蜥蜴がするのです。物珍しさも手伝って、大ヒット間違いなしです。これからは、まずパーティーメンバーの似顔絵を描くところから初めて、腕をあげていきましょう」
「げ? げげ?」
「スピードが大事です。最長でも10分以内ではないと、客が付きませんよ」
「げ? げっげげ、げげ?」
戸惑うゲーサンをよそに、己の商売計画を立てていくシルヴィア。彼女の興味はユーフェミアをイジル事より、ゲーサンを使っての商売の方に移っていつつあった。
しかし、ゲーサンはたいしてシルヴィアの話をまともに聞いていなかった。今は彼女の頭の上に乗っているクーちゃんを描くのに夢中であった。
「クー?」
そんな二人(一人と一匹)を見ながら、クーちゃんは首を傾げていた。
離れていたところにいたシルヴィアとゲーサン、そしてクーちゃんに声をかけ、奥に進むことになったことを告げる直斗。
「やれやれ、結局奥に進むのですね。まあ、そうなるだろうと予想していたので、何の問題もありはしませんが」
この頃、本当にシルヴィアの方向性が分からなくなってきたな、そう思うパーティーメンバー達。
「毒舌キャラでも目指したいのか?」
直斗の頭の中に浮かぶは、あの毒舌王。彼の域に達することが出来るとは思えないが。
「この頃、私を変な目で見ていませんか? そのようなモノ、目指してはいませんよ」
そう答えられたら、どうしようもないな。触れずにいてやろう。
「触れないでおこう、とか考えていませんか、ナオトさん?」
何故、俺の考えていることが分かるのだろうか? 本当に彼女はいったい何者なんだろうか?
「まあ、いいです。先に進もうではありませんか」
何故か彼女が指揮をとり、先に進むことになった。もちろん、先頭は直斗である。
「何故、先頭が俺なんだ?」
「何かあった時に対応できる人が先頭に立つべきです。この中では、ナオトさんか蜥蜴丸、そしてディアナさんです。その中で先頭に立ちそうなのはナオトさんしかいないではありませんか」
「蜥蜴丸は?」
なんとなく、言い当てられて不快だったため、抵抗する直斗。
「蜥蜴丸が先頭に立つ? ありえませんね。何故なら蜥蜴丸は先頭に立つ名誉とかより、己が危険にさらされないように、ナオトさんを無理やり先頭に立たせることを選ぶからです。ついでに言えばディアナさんはナオトさんの先に立とうとはしないでしょう」
「よく分かっているではないか」
ガッチリと握手を交わす蜥蜴丸とシルヴィア。その横では、うんうんと頷くディアナ。
シルヴィアを怖い存在だとして認識し始めた直斗がそこにいた。だから言っているのに……とブツブツ呟いているユーフェミア。
それを見て、相変わらず平和だなぁ、と考えているエクリアがそこにいた。
時々現れるモンスターを退治して、奥へ奥へと進む一行。
「うーん、レナードが言っていた通り、遺跡に入るまでが問題だったね、確かに。モンスター、そんなに強くないね、この遺跡内は」
そう言いながらも、直斗の黒コートから手を離さないユーフェミア。
「そう思うなら、コートから手を離してくれないか、ユーフェ。闘いにくくてしょうがないんだが」
「ここで手を離したら、またシルヴィアがやって来るでしょう!!」
未だにシルヴィアを恐れているユーフェミア。
「何言っているの、ちょっとは闘ってよ、ユーフェ。うちのメンバー内では数少ない魔道士タイプなんだから!!」
エクリアが怒るのも無理はない。物理攻撃が効きづらいモンスターには魔法攻撃が有効なのだが、シルヴィアを恐れるあまり、直斗の傍から離れようとしないので、ほとんど闘っていないのだ。
エクリアに怒られて渋々直斗の傍を離れて戦闘に参加するようになった。
「クカカカ、女に頼られて悪い気はしない、そんな顔をしているな」
「当然だろう。女にモテたい、そう思うは孤独な男のサガよ」
「ようするに、今まで女にモテたことがないのだろう?」
「イケメンは死ぬべきだと思うんだ。そうすれば、俺が女の子にモテる確率が少しは上がる筈なんだ」
己がモテない事をイケメンのせいにする直斗であった。
遂に、最奥の間へとやって来た直斗たち。
「ガ●ラの背にあった遺跡とは思えない程、広い空間であったな」
直斗の疑問はもっともであろう。
「どうやら、空間全体に魔法がかけられているのであろうよ。だからこそ、今まで攻略した古代遺跡も、数時間かけて攻略するのがほとんどであっただろう? つまりは、そういう事よ」
「すまん、よく分からん。その最後のセリフを言いたかっただけだろう?」
「うむ、流石ワガハイの相方よ」
「お前の相方にするんじゃねーよ」
何をいまさら、なんて顔をパーティーメンバー全員がしていたが、直斗は気にしないことにした。蜥蜴丸の相方なんて思われていたなんて、ショックがでかすぎる。
最奥には、祭壇のようなモノがあった。
祭壇の奥には、まるで何かが封じられているかのような、棺みたいなものがある。
そして、祭壇には装置。これがレナードの恋人の幽霊が言っていた数字をうちこむ装置であろう。
だが、そんな事を気にする直斗と蜥蜴丸ではない。
まず、棺を開けられないか、色々な手を使って試す。
「まあ、こういうところの棺は開けると変なモンスターが出てくるか、宝物があるか、実は空っぽか、という三点にだいたい集約されます」
「誰に説明しているんだ、蜥蜴丸よ?」
とりあえず、手で開けてみようとする直斗。当然と言えば当然だが、開かない。
「素手で開けようなど、愚か者のすることよ」
次に蜥蜴丸が提案してきたのは、実はこの棺はフェイクであり、この棺の下にこそ、何かが埋まっているという事だった。
ゲーサンを呼び、二人で(蜥蜴丸は、肉体労働は直斗とゲーサンの役割よ、と言って手伝おうとはしなかった)、棺を持ち上げた。
もちろん、棺の下に階段があったり、なんていう事はなかった。
「当然と言えば、当然の結果よ」
「謝れ、俺とゲーサンに謝れ!!」
「おいおい、その程度の事、予想していたであろう? 何故、ワガハイが謝らなければならぬ?」
「相変わらず、平和だねぇ」
直斗が異空間からとりだしたブルーシートに座り、女性陣はティータイムと洒落こんでいた。
「ああ、エクリアさん手作りのお菓子、美味しいですねえ」
「喜んでいるところ悪いけど、シルヴィア、それ、ナオトの世界のお菓子だって。シュークリームってお菓子だよ」
「なんと、エクリアさん手作りのお菓子だと期待して食べた先ほどの私をぶん殴ってあげたいです」
「喜んでぶん殴ってあげる!!」
ユーフェミアがシルヴィアの頭に可愛く拳骨を振り下ろした。
「痛いじゃないですか!!」
少し涙目になるシルヴィアを見て、満足そうに頷いて食事に戻るユーフェミア。
「ふむ、こうして茶とお菓子を頂いているのはかまわないんだが、私たちも手伝わなくていいのだろうか?」
ディアナは直斗たち(直斗とゲーサン)が汗水たらして働いているのに、何もしていないという事に少し気がひけるようだ。
「ああいう事に夢中になっている直斗と蜥蜴丸は簡単に止められないよ。止めたら止めたで文句言ってくるんだから」
直斗と蜥蜴丸に対して一番の理解度を示しているエクリアであった。
「お前は本当にあの二人に対する理解度が高いな、どうすればその域まで辿り着けるんだ?」
「……付き合いの長さ、じゃないかな?」
それ以外に理由が考えつきそうになかった。
エクリアの膝の上ではコリスが、ディアナの膝の上では、クーちゃんが丸くなって眠っていた。平和であった。
「こうなりゃ、最後の手段、爆破よ」
「それしかないな」
「げっげー!!」
バカ三人は盛り上がっていた。
棺の手をかける部分(ここに手をかけても、開かない)に爆弾を詰め、起爆装置をもって女性陣の近くで起爆する直斗たち。
「あ、それ、ポチッとな!!」
「貴様、ワガハイのセリフをとるんじゃない!!」
「五月蝿い、俺も言ってみたかったんだよ!!」
爆風と煙が落ち着いた後、棺を見てみたが、無傷であった。
「なんだ、やっぱりこうなったか」
「とりあえず、騒いでみたかっただけだしな」
案の定の結果に気落ちすることもなかった直斗と蜥蜴丸であった。
「さて、では、マニュアル通りに、数字をうちこんでみるか」
「ワガハイがマニュアル通りに動くと思うなよ!!」
パーティーメンバー全員、それが負け惜しみにしか聞こえなかった。




