エピローグ
あれから。
遠野が罪を認めていたために、捜査は比較的楽に進んだらしい。
事件に使われた毒が発見され、それが決定的な証拠となったようだ。
遠野がこれからどうなるのかは、僕は知らない。けれど少年院の収容年齢はおおむね12歳からだ。遠野は14。だから多分、とは思う。
教室はいつも通りのように見えた。
ただ変わったところといえば、遠野がいなくて、誰が置いたのか石橋の机には花があって。
三船は、別のグループの女子と一緒にいた。
でも、遠野と石橋といたときの方が三船が楽しそうに見えたのは、気のせいだろうか。
三船はこれからそのグループに溶けこんでいくんだろう。本来の気の合う友達かもしれないし、もしかしたらまた、特に好きじゃない人達なのかもしれない。三船は多分、一人でいるのが怖いんだと思う。
三船にとって友達とは、一人じゃなくなるために必要なものなんだろう。友達なんてそんなものなのかな……。
はあ、と僕は大きく息をついた。
思った以上に、事件のことを引きずっているらしい。
いい加減落ち着け、自分。今までだってよくあったことの筈だ。ただ、今回は身近な人が犯人で被害者だっただけで。
「……狼、司狼」
「え?」
南田だった。いつの間にか隣に立っていたようだ。
「大丈夫か?」
「? 何のことだよ?」
「とぼけんなよ。遠野と石橋のこと」
「……」
図星を突かれて少し動揺してしまった。もちろん南田はそれを見逃さない。
「お前は大丈夫じゃない時に限って平気だ、って言うんだよな……。何我慢してんのか知らないけどさ、きついときは堪えなくたっていいんだぜ?」
ああ、そうか。
こういうのが、友達なんだな。
*
「いらっしゃいませ、立森さん」
クロの家に行くと、いつものように小織さんが出迎えてくれた。
「クロは……」
小織さんは困った様に曖昧に微笑んだ。
「……まだ部屋にいます」
「わかりました」
あの後、クロはまた学校に来なくなってしまった。
事件をかなり引きずっていることは間違いない。
僕は階段をのぼり、クロの部屋のドアをノックした。いつもながら返事はかえってこない。
「クロ、入るぞ」
ドアを開けると、クロが本を読んでいた。
「……」
このところ、クロはずっと同じ本を読み続けている。読み終わっていない筈はない。多分何十回と読み返しているんだろう。
「面白いのか? それ」
「別に。世界一くだらない本だわ」
それでも、クロはページを捲る手を止めない。
そういえば、遠野と初めて出会った時も、その本を読んでいた。
その本の、題名は。
――『友達』。
遅筆&バッドエンドですいません……(汗)
ここまで読んで下さり、どうもありがとうございました。