第六話 逃亡⑤
黒猫の案内で森を抜けると、視界が一気に開けた。
そこには高い石壁に囲まれた大きな街があり、巨大な門の前には入場を待つ人々が長い列を作っていた。
「……街だ……」
思わず呟く。
ようやく辿り着いたという安堵が胸に広がる。
「この街に、その“縁を切れる人”がいるのか?」
「そうだにゃ」
黒猫は短く答えると、さっさと歩けと尻尾で急かした。
(ここで……俺は助かるのか……?)
そう考えた瞬間、胸の奥で何かが蠢いた。
逃げろ
(……うるさい。今はそれどころじゃない……
このままじゃ本当に死ぬんだ。行くしかない……)
列の最後尾に向かおうとしたその時――
黒猫はまったく別の方向へ歩き出した。
「おい、どこ行くんだよ。この街に入るんじゃないのか?」
黒猫は振り返り、呆れたように言う。
「君さぁ。あそこは“町に入るための検査”をする列だよ?
君がそのままで入れると思うのかにゃ?」
「……あ」
言われてみれば、俺は今、
• 異世界に飛ばされたばかりで何も持ってない
• 服装も明らかに場違い
• しかも“逃げろ”の呪い付き
……どう考えても怪しい。
「君はこっち。いいからついてくるにゃ」
黒猫は門から離れ、壁沿いの人気のない場所へ向かっていく。
高い塀に囲まれた、明らかに“裏口”っぽい場所だ。
「まさか……ここをよじ登れとか言わないよな」
「にゃはは、まさか。君どう見たって登れないでしょ。馬鹿じゃないの」
「おまえ……!」
黒猫は尻尾を揺らしながら壁に向かって歩き――
そのまますり抜けて消えた。
――は?
「何をぼさっとしてるにゃ。さっさと来るにゃ」
声だけが壁の向こうから聞こえる。
恐る恐る手を伸ばすと、壁はまるで霧のようにするりと抜けた。
気づけば街の中に立っていた。
「これって……不法侵入になるんじゃないか……?」
「細かいこと気にしてる場合じゃないでしょ?
ほら、早くいくにゃ」
黒猫はさっさと路地裏へ向かっていく。
「おい、待てよ!」
細かいことは考えず、俺はとりあえず黒猫の後を追った。
サクッと読めるくらいの文の長さに分けて投稿しているのですが、
今のままだと短すぎるかなぁと思うので、徐々に長くなっていくかもしれません。




