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再編の針と失われた縁  作者: 神田長十郎
第一章 再編の針
5/9

第四話 逃亡者

紡を追っていた人物の視点になります。

森の奥へと続く足跡は、常識では考えられないほど乱れていた。

転びかけた跡、急に方向を変えた跡、木の根を踏み台にしたような跳躍跡――

どれも普通の人間ができる動きではない。


「……やっぱりおかしいよ、あの動き」


エイラが眉をひそめ、弓を握り直す。


「禁術の影響か、あるいは……」


カティアは槍の先に炎を灯し、足跡を照らした。

赤い光が揺れ、森の影が不気味に伸びる。


「さっきの人……やっぱり禁術の協力者なのかな……」


「少なくとも、無関係ではないだろうな。

あいつがまとっていた甘ったるい匂い……あれは“高濃度マナ薬”の匂いだ。

あの場でも漂っていた。あそこから逃げた奴で間違いないだろう」


カティアの声は低く、警戒に満ちていた。


エイラは木々の間を見渡しながら、息を整える。


「カティア……一度戻ってレオンに報告したほうが……」


「そうだな。どのみちこの暗さでは、私たちだけでは見つけるのは困難だろう。それに……」


その瞬間、遠くから笛の音が聞こえた。

集合の合図だ。


「エイラ。集合がかかった。戻ろう」


「うん……」


―――


――





二人が森の入口へ戻ると、腕を組んだ青年―レオンが待っていた。


「やっと戻ってきたな、二人とも。逃げた奴はどうした?」


カティアが姿勢を正す。


「……逃げられました。動きが異常で、普通の人間とは思えませんでした」

エイラも悔しそうに唇を噛む。


レオンは少し目を細めた。


「逃げられた? お前たち二人がかりでもか?」


「申し訳ございません……」


二人は同時に頭を下げた。

レオンはため息をついたが、責めるような口調ではなかった。


「まぁいい。あの場にいた三人はすでに捕縛している。

グウェン様に視てもらえれば、逃げた一人もすぐに見つかるさ」


その言葉に、カティアとエイラは顔を上げた。


(……そうだ。“あの方”なら、縁の痕跡を辿ってすぐにでも見つけられる)


「よし、みんな。撤退だ」

レオンの合図でそれぞれ撤退の準備をする。


カティアは振り返り逃げた男がいた森を見つめる。

森の奥から、冷たい風が吹いた。


明日も7時くらいに投稿予定しています。

至らぬ点があると思いますが、よろしければまた見てください。

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