ドラゴンシールド
短編小説:『ドラゴンシールド』
その盾は、王都でも伝説と呼ばれていた。
「竜の鱗から鍛えられた、炎をも防ぐ盾」――ドラゴンシールド。
冒険者カイルは、全財産をはたいてそれを手に入れた。
それは美しく、重く、まるで命そのものを宿しているようだった。
仲間もいたが、彼は単独で挑むことを選んだ。
「もう誰も、竜に焼かせはしない」
そう言って、彼は笑った。
――そして、ダンジョンの奥。
地の底から、轟音とともに現れた影。
鱗は黒曜石のように輝き、眼光は灼熱そのもの。
巨大なドラゴンが、咆哮とともに息を吸い込んだ。
カイルは盾を構える。
炎が奔る。
赤と白の光が洞窟を飲み込んだ。
轟音。閃光。
だが、盾は――砕けなかった。
炎は防がれた。
確かに、ドラゴンシールドは伝説に偽りなしだった。
……だが。
空気が、ない。
炎が防がれた瞬間、周囲の酸素は燃え尽きていた。
音が遠のく。
体が重い。
息を吸おうとしても、何も入ってこない。
ドラゴンが再び息を吸う。
その口元に、動かぬ人影が映った。
カイルは、盾を構えたまま、静かに倒れていた。
傷ひとつない顔には、安堵にも似た笑みが残っていた。
――ドラゴンシールド。
確かに炎は防ぐ。
だが、空気までは守ってはくれなかった。
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地球温暖化で二酸化炭素だけが悪者になっているが本当にそれだけか?という問いかけの物語です




