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趣味探し
男は今日も街を歩き、革細工、陶芸、ボルダリングの店をのぞいた。どれも確信がなく、胸には「見つけなくては」という小さな焦りがあった。
「これじゃないな……」
飽き性だと笑われても、男は探すのをやめなかった。
ある日、古本屋の奥で、白髪の店主に声をかけられた。
「若いの、ずいぶん熱心に探しておるな」
「ええ……。良い趣味が見つからず、焦るばかりで」
店主は薄く笑った。
「それなら、もう見つかっておるよ」
「え?」
「お前さんの趣味は、“趣味を見つけること”じゃよ。その探す歩み自体が、立派な趣味なんじゃ」
男はハッとした。たしかに、探す行為が何より楽しかった。
店主の言葉に、男は長年の焦りが溶けていくのを感じた。
「さて、今日の“趣味探し”はどこへ行こうか」
本屋を出た彼の声は、もはや何かに追い立てられることなく、心から楽しげだった。




