太陽と北風
太陽と北風
空の高み、二つの存在が向かい合っていた。
柔らかな笑みをたたえる太陽と、冷たい息を巻き上げる北風。
「ねえ、北風。今日も退屈だね。何か勝負でもしようか。」
「勝負?」北風は目を細める。「いいだろう。お前のぬるい光より、俺の一吹きの方がずっと力がある。」
太陽が微笑んだ。「じゃあ、あの旅人のコートを脱がせた方が勝ち。どう?」
北風は笑った。「そんなの簡単だ!」
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最初に動いたのは太陽だった。
穏やかな光を降り注ぎ、風もなく、草原がきらめく。
旅人は汗をぬぐいながら、あっさりとコートを脱いだ。
「終わりだね。」
太陽が軽く言うと、北風の顔が一瞬で曇った。
「ふざけるな! そんなの勝負じゃない!」
怒りに震える北風は、雲を巻き上げ、地を唸らせた。
暴風が旅人を襲い、コートは宙を舞う。
彼が伸ばした手をすり抜け、はるか彼方、地の果てへと吹き飛んでいった。
「おい、返してくれ!」
旅人の叫びは、吹雪の音に消えた。
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やがて、北風は息を切らせて止まった。
眼下には、震える旅人と、泣きそうな空。
参戦準備をしていた火山が温泉を沸かしたまま飛んで行くコートを眺めていた。
さらに自身満々に参戦準備をしていた雲は旅人の想像力を掻き立てるには充分なあられもない女体の形をして待ち構えていたが、さりげなく元の雲の形に戻って何事もなかったかのように空に流れていった。
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個性と得意分野を伸ばしましょう




