表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠のヒーラー(ショートショート集)  作者: シンリーベクトル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/21

アイテムボックス

「アイテムボックス」


神崎は、最初こそ慎重だった。

「便利だな、このスキル」

旅立ちの日、手に入れたのは、無限に物を入れられるという伝説の能力――アイテムボックス。


最初はパンと水、古びた剣、拾った薬草。

小さな成功を積み重ねるたびに、中身は少しずつ豪華になっていった。

宝石、金貨、魔導書、珍獣の毛皮。

気がつけば、ボックスの中は財宝でぎっしりだった。


「俺、もうすぐ大富豪じゃねえか!」

笑いながら神崎は酒場で金貨を数える。

その夜も、次の冒険で手に入れた宝を、得意げにボックスへ放り込んだ。


……その瞬間だった。


耳の奥で、冷たい声が響いた。


《収納期間、満了しました。》


「……え?」


目の前のボックスが、淡く光って消える。

どこにもない。

いや、正確には――

中身ごと、神の領域に“返還”されたのだ。


「嘘だろ!? 俺の宝は!? 金貨は!? あの剣は!?」

神崎は地面に崩れ落ちた。

だがその時、空から一枚の紙がひらりと舞い落ちる。

そこにはこう書かれていた。


《ご利用ありがとうございました。

 またの“人生”でのご利用をお待ちしております。》




天界のデスクには、今日も申請書が積み上がっていた。

「はいはい、また“冒険者向けサービス”の申込ね」

神は欠伸をしながら書類に印を押す。


《スキル:アイテムボックス 期間限定プラン(初回無料)》


下界の若者・神崎という男に与えられたそれは、どんな物でも無限に収納できるという夢の能力だった。

神は軽く笑う。

「ま、最初はパンとポーションくらいだろう。問題ない問題ない」


――数か月後。


管理端末に警告が点滅する。

「おや、容量がすごいことになってるな……金貨、宝石、聖剣、ドラゴンの鱗……」

神の眉がぴくりと動く。

「へぇ、やるじゃないか。努力家だねぇ」


そして、予定の日。


《収納期間、満了しました。回収を開始します。》


瞬間、天界のサーバーが光に包まれた。

山のように積み上がる金貨、きらめく宝石、伝説級の武具たち。

神はしばらく無言でそれを見つめ――やがて、口角を上げた。


「ふふふ……いやぁ、いい回収だった。

 人間って本当にがんばるねぇ。無料プランのくせに、これだけ集めてくれるとは。」


天界の財務省の天使がメモを取りながら尋ねる。

「次はどうされますか? 延長プランの案内を?」


神は笑顔で首を振った。

「いや、放っておけ。きっとまた別の人間が、同じ広告を見て申し込むさ。」


机の上には、新しい申請書がひらりと舞い降りる。


《スキル:アイテムボックス 利用希望者:田中 次郎(初回無料)》


神はペンを走らせた。

「はい、承認。……さて、今日もホクホクだな。」




――――――――

スマホのバックアップの大切さを学びましたね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ