永遠のヒーラー
はるか昔、
ひとりのヒーラーがいた。彼は傷ついた者を放っておけなかった。
彼は全力で傷や病を治療した。その成果もありみるみるレベルが上がった。
彼はどんな病も癒し、どんな傷も治した。
死にゆく者を見捨てず、泣く子を放っておけず、
人々の願いを聞くたびに力を使い続けた。
やがて世界から死が消えた。
人々は歓喜し、祭りを開いた。
王は「この国は永遠に繁栄する」と宣言した。
――それから数百年。
⸻
街は、静かすぎた。
子どもが泣かない。
老人が死なない。
人々は老いても死ねず、
肌は枯れ枝のように皺だらけにひび割れ、
骨が軋み、内臓が腐りながらも意識だけは残った。
それでも、死ねない。
なぜならこの世界には、
「死」という機能そのものが、存在しないからだ。
⸻
王城の地下には、数千体の人々が積み重なっていた。
動かぬのに生きている。
心臓は動きを止めたが、魂は抜けられない。
誰もが口を開けば同じ言葉をつぶやく。
「治して……治して……」
ヒーラーは意識も無く年老いた体で街全体にヒールを撒き散らしていた。永遠に。
彼もまた勇者に倒される存在なのだろう。




