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杏の霊譚  作者: ビスコ
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出会い

中学生、高校生といえば大人でもないし子供でもない年代だ。

洋楽、恋愛映画、異性、喫煙、飲酒などの大人の世界の入り口に立ち、覗き込んで興味を持ったり、実際に始めるのもいる。

その反面、子供の気持ちも残存してるのでアニメや漫画、ラジコンやプラモデル、ゲームなどの世界からも抜け出せないのもいる。


ちょうどその年代になると心霊写真やオカルト的なものにも興味を示す様になるのも全国的に同じらしい。



あれは僕が中学生だった時。

クラスでオカルトが流行った時期があった。

どこの地域の小中学生も同じだとは思うけど最初は誰かがこっくりさんをする事から始まった。

五十音や数字、はいといいえ、鳥居のマークなどを書きこんだ紙に十円玉を置いて何人かで指を置き、『こっくりさん、こっくりさん…』と呼び掛けながら質問をすると誰も力を入れてなくても十円玉が紙の上を動いて応えてくれる。


ちょっと神秘的で不思議な感じが小学生よりも大人になったなって思えるのと興味が出てきた恋愛について質問ができたりするのが流行りの理由の様に思う。


誰かが兄弟や先輩から聞いて来たのを始めたのが流行りのきっかけだったのだろう。


女の子を中心にあっと言う間にクラスに広がって、休み時間や放課後には幾つかのグループがあちこちでやってた。

「大体が○○さんの好きな人は誰ですか?」



とかだったと思う。


その位で済めばまだいいのかもしれないけど(勿論、今から考えたら、それでも怖い事なんだけど)、中には段々エスカレートしてタロットを始めるグループや占いとして髪の毛や持ち物や筆跡を使ったりとかのグループも出てきた。


僕は正直あまり興味がなかった。

男子の中には嵌ってる奴も多くいたけど、オカルトに興味のない奴らもいて、僕もその1人だった。


周りは騒いでいたけど僕らはサッカーの雑誌読みながら話とかしてたと思う。


女子は一人を除いてみんながそのブームに乗ってやってた。


そのブームに乗らない一人は当然、他の女子からは奇異な目で見られて、いじめの対象となる。

無視されたり物を隠されたりしてた。


゛大塚杏゛と言う、黒いストレートな髪で色白。ちょっとキツい目つきの女の子だった。


ある日のお昼休み、いつもの様にあちこちで占いやら降霊とかしはじめた。


教室は三階にあってその日は風も無かったのでこっくりさんのグループは窓を開けて霊の入り口を作っていた。


しばらくして、サッカーの話をしてる僕らの近くにいた大塚が急に立ち上がりクラスを見渡して言った


「みんな、そんな事止めなよ」って。


クラス中が一瞬静かになった。が、すぐに


「うぜー」


「なにあいつー」


「何か憑いたんじゃない?」



とか声があちこちから上がった。


クラスの中で女子のリーダー格の女の子(タロットしてたと思う)が大塚の側に来て言った。

「何よあなた。何であなたに指図されなきゃならないのっ?高飛車な態度で…臆病なだけでしょっ」


大塚は黙って聞いていたが、ため息をつくと平静に黙ったまま教室の前の方を指す。


その指した先には


キャーー!

うわぁぁぁぁっ!


叫び声がクラスのあちこちで上がる。

逃げ出す子や泣き出す子まで出てパニック状態になった。


大塚が指した先…僕も見てしまったんだ。

外から顔を半分だけ出して教室を覗いてる女を。

顔色は黄土色で目は黒目が大きいのか真っ黒。

長い髪が風に吹かれるように舞っていた。




そいつはすぐに下に消えていった。


リーダー格の女の子は目を大きく見開いたまま窓から目を逸らすこともできず何も言えなかった。口元がピクピクと震えていた。


大塚が冷静に言った。

「ね、呼んじゃったのよ。遊びでするものじゃないわ」

そう言って本の続きを読み始めた。


クラスのオカルトブームはその日を境になくなった。



これが出会いになったとは勿論この時点では気付いても居なかった。





今思えばこっくりさんは姿が見えないと言うのも流行った理由の一つなのではないかと思う。

見えないからフェアリー的なイメージで、できるのではないかと。

もしそれが腐乱した様な姿ならどうだっただろう… 



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