真の最終章:継がれし坩堝
研究所跡地。
崩壊した瓦礫の影に、誰も気づかなかった少女が立っていた。
彼女の名は――坩堝の妹。
生まれながらにして、姉のような異能力を持たなかった。
ただの「凡人」として、ずっと周囲の目に映らずに生きてきた。
だが、その胸に温もりが流れ込むのを感じたのは、あの日の直後だった。
崩壊する最中、姉が最後に残したギフト。
その力と、記憶と、願いが、妹に託されていたのだ。
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「……お姉ちゃん……」
涙を拭い、少女は立ち上がる。
視界には、瓦礫の中で倒れた姉の姿。
その顔は、安らぎと苦痛の狭間にあった。
「あなたの代わりに、私が行く。
あなたの願いを、必ず果たしてみせる」
その声は震えていたが、確かな決意を宿していた。
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数年後――
世界には異能力を研究・悪用する新たな科学者集団が乱立していた。
混沌の時代に乗じ、力を奪い、実験を繰り返し、再び悲劇を生み出す者たち。
だが、そんな彼らの前に、黒いコートを纏った少女が現れる。
赤く光る瞳。
その姿は、かつて世界を変えた「坩堝」に酷似していた。
「お前たちが……お姉ちゃんを殺した」
その声とともに、異能力の奔流が解き放たれる。
彼女は、二代目『坩堝』。
姉の願いと痛みを継ぎ、世界を旅する者。
悪しき科学者たちを討ち、異能力の暴走に抗う者。
人々は再び、その存在に畏怖と憧れを抱く。
そして伝説は続いていく――
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> 姉が残した願い。
妹が背負った宿命。
それでも、彼女はただ一つを信じて戦う。
「普通に笑える世界」を――。