4話 妙な感覚
四
「お前に娘を嫁になんて絶対やらんぞぉ!!」
ちょっと待ってくれよ。このおっさん話通じなすぎるだろう!
今どういう状況なのか説明しよう。
煽りと握力のステータスがカンストしてる王女さんと一緒に王室の入り口にテレポートした。
王女さんを先頭に王室に入るや否や、後ろの男は誰だ、そんなビチョビチョでどんなプレイをしたんだとか怒号をかけられた。
水浸しにしたのはあんたの娘さんなんですがね、勘違いしないでいただきたい。
あと昔から大きい声で怒鳴られるのは苦手なので本当にやめてほしい。小学生の頃なんかだったら絶対泣いてた。
大人になって久しぶりに人から怒号を浴びているがやっぱりこの感覚は慣れない。
「あーえっと、ちょっと待ってください。お義父さn」
「誰ぁぁれがお義父さんだぁ!!??」
おっと、冗談は通じないみたいだ。そもそも俺の発言は耳に入れてくれないらしい。
すると隣にいる握力バカが口を挟んだ。
「お父様、誤解です。
この方は私に求婚を申し出てくるそこらの貴族ではありません。大森林グリマスで魔物駆除をしていたところ、この方が倒れていたので助けました。」
「ムッ!リリーナ、それは本当か?
コヤツが水浸しなのはアクウォータスに負けたというわけか!」
リリーナは一瞬固まったのち父の言葉に賛同した。
なんか少し誤解されている気が…まあいいか。
「申し遅れた。私の名はロウラス。
先程の無礼な言動により君に不快な思いを与えてしまったことを心からお詫びする。先ほどの無礼を許してはくれまいか?」
「あ、あぁ。コチラも説明不足で誤解を招いてしまって申し訳なかった。」
話の通じなかったジジイはさっきの態度とは真反対に王族のように礼儀正しく謝罪の言葉を述べた。
頭が硬くて第一印象は最悪だったが意外とこのジジイは根は良い人なのかもしれない。
お姉さんの説明のおかげでとりあえず俺の誤解は解けたようだ。
名前はロウラスとリリーナというらしい。
ロウラスとリリーナはよほど仲が良いらしく、俺を置いて話が盛り上がっている。
ジジイはリリーナの頭を撫で撫でして、撫でられたリリーナはキャピキャピしている。
よほど仲が良いのか、俺がいるっていうのにお構いなしだ。
あとアクウォータスというのは水属性の魔物の名前なのだろうか。
強さや見た目は?気になるところはたくさんあるが、激弱モンスターに負けたと勘違いされるのはごめんだ。後でちゃんと話し合おう。
すると王様が真面目な顔で口を開いた。
「ところで其方の名前をお聞きしていないのたが…」
あ、そういえば最初に出会ったリリーナにも名前を言ってなかったな。
「俺の名前は斉藤令司です。よろしくお願いしm」
と言い終えようとしたら俺の首の前に発光している槍のようなものが出現した。あと3センチほど自分の方に向かってきたら刺さる距離だ。これはヤバい。頭の中にひとつ感じた感覚は「死」だった。人間が死ぬ時っていうのはなにも反応できないのだ。
え?どういう事?さっき許してくれたんじゃなかったのか?なんかヤバい事言っちゃったのか?礼儀正しくしたつもりだが…。
「貴様、レイジの生き残りか?」
物凄い殺気だ。何年にもわたって受け継がれてきた憎しみのようなものを感じた。
ああ、ここで覚めちまうのか。後味悪い夢だ。
夢だしもういいかと思いながら目を閉じる。
首に刺さっていく矢の感覚が妙にリアルに感じる。
―イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ―
悶える暇もなくほぼ即死であった。




