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未亡人のマリーゴールド 四幕

 待合室で飲み物を飲んでいたら、こちらに物凄い勢いで走ってくる人物が来た。

 「桜――――!何があったの!?明君はどうなったの!」

 「……先生……声が」

 「無事なの!?あいつが現れ――――――」



 場所を移して三人は病院の外で話をしている、四月の夜は冷たい風が吹いていて寒かった。

 「…………」

 『……はくしょん!!』

 「……ごめん」


 「病院では」

 「ズビッ……静かにしましょう」

 「……はい、すみません……」

 先程匡人が大声を出し続けていたせいで看護師さんから外で話して、といわれ現在病院の外である。



 「ゴホン、改めて桜ちゃんあそこ、いや君たちに何があったの?」

 桜は説明した自分たちに起こったことを。

 「……なるほど、相手側は分かっていたんだろうね。君たちが尋ねることを」

 「逆に嵌められたってことですか?」


 「うーん……まだ分からない。これからの出方次第だね……どう思う?」

 「…………今あの二人から目を離さない方がいい。呪いにかかってるから奴らは行方をくらますと思う」

 「なんの能力か知ってるのいるのか?」

 「幻影、洗脳……」

 「は?」

 「とりあえず暫く二人を見張っておいた方がいい」

 「おい!ちゃんと説明しろ!」

 安斎は苛立ちながら問い返した。


 「……恐らく明君と新井君は敵の手に落ちたと考えていい。簡単に言うと操られて今は眠っている状態だね」

 「「…………」」


 桜と安斎は思わず黙ってしまう。


 「二人が起きる可能性は?」

 「無理だね。呪いをかけた本人が解くか、相手が持っている呪いの原因の本を壊すか、しないと目覚めないよ」


 深い溜息を吐いた安斎は頭を抱えて沈黙した。

 桜の花びらがそよ風に乗って目の前に降ってきた。桜吹雪を目で辿るとソメイヨシノが満開だった月に照らされ、淡い桃色に輝いている。桜はいつも竹刀袋を持っている、それは自分の命と同じくらい大切で匡人先生と仕事をする上で大事な仕事道具でもある。それを強く握り決意を決めた。


 「ここで考えても何も始まりません。先生これからどうすればいいですか?」

 「……桜ちゃん…………そうだな切り替えないとな」


 「まずは呪いに罹った二人を監視することが先決、敵は必ず二人を操って何かしてくるはずだから、注意しておいて」

 「はぁ……了解」








 数日後。

 昼間。私は二人が眠っている病室で見張る事になった。ずっと見ていると先生に進言しだが断られた、昼間は私、夜は先生との事。警察病院であっため融通が利いた。本来は家族か親戚にしか、病院に泊めることは出来ないからである。女の子が一人病院に泊めさせるわけにはいかない、夜は必ず事務所の家に帰りなさい。と言われてしまい泣く泣く今に至る。静かに眠る二人はとても静かで呼吸の音しか聞こえない。

 



 正直私は今病院の窓から見えるソメイヨシノの木が嫌いだ。何故なら子供の頃の記憶を嫌でも思い出すから、昔居た私の部屋には小説の本が三冊とベットだけっだった。窓の外には病院の中庭とソメイヨシノしか無くてつまらなかった。実験が終わった後は必ず寝てしまい、起きるとソメイヨシノの桜の蕾はいつの間にか枯れていて、新緑の葉の季節になっていた。同じように実験のあと起きると、枯れ枝しかないソメイヨシノの木がいつもそこにあった。病院と三冊の小説本とソメイヨシノ私はこの3つが嫌いだ。我慢することはできるがあまり見たくはない。

 

 「…………はやく枯れてくれないかな、桜の花……」

 彼女は虚ろな目でぼんやりと呟いた。




 匡人は眼鏡をかけて書類とホワイトボードを睨みながら今回の状況の整理をしている、そこに一人のスーツ姿の男性が入ってきた。

 

 安斎「入るぞーって!なんだこれ!紙だらけで足の踏み場が無いじゃないか!」

 匡人「じゃあ入るな」

 安斎「整理ぐらいしろ」

 匡人「やってる、追いつかないだけだ」

 安斎は肩をすぼめて呆れた。

 

 安斎「何調べてた?やっぱ立花稀華子?」

 匡人「ああ、立花は5年前東京に越して来たみたいだな、子供を出産した後直ぐ訴えられてる。不倫されたとして」


 安斎 「……立花は負けて相手側が損害賠償請求をした。1年後父親が息子の親権を勝ち取った」

 匡人「そして立花は精神科に通うよになる」

 安斎「昨日捜索令状を出した病院だな……」

 匡人「3か月前豪華客船沈没事故がおきた。そこには立花も乗っていた………………別れた男と訴えた女も一緒に乗っていたら?」


 安斎「………………」

 匡人「立花はどこかでそれを知って、船に乗ったそして…………二人を殺害した?」

 安斎は無言で頭を横に振って違うと言った。

 

 「確かではない未だに船の捜索と救助を行っている。その証拠が今現在見つかっていないんだ、だから立花を捕まえられない。憶測でしかない」

 「なるほど……憶測でも動機が分かった一歩前進」


 「ていうかさっきの会話で、今俺が持ってきた資料ただの紙切れになったぞ」

 「はっはっは――どうだ!」

 「……ムカつくな……」



 匡人はコーヒーを淹れて一旦休憩しすることにした。淹れたコーヒーを安斎に渡して一口飲んだ。

 「不思議に思うのだけれどなんで、なんの関係のない明君が巻き込まれたんだ?」

 この問いに匡人は苦笑いを浮かべた。

 「…………多分メッセンジャーにされたのかな……」

 「???」





 西の空が赤紫に染まり始めてきたので桜は帰り支度を始めた。

 「……また明日も来ますね」

 荷物を持って廊下に出た時だった。

 ガラスが割れる音を聞いて立ち止まり引き返した。そこには明が立っていた、割れた窓ガラスから風が流れてカーテンが揺れていた。




 「あ――――」

 「声を出すな。二人の首を切られたくなければ」

 桜は喉まで出かかっていた声を押し殺して我慢した。明はにやりと狂ったように笑う。夕焼けが深まって青紫色に染まる空は次第に暗くなる。春の風音が小さく響く。


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